偶然隣り合わせた美容師と意気投合して…憂鬱な出張が巡りあわせたときめき (ページ 3)
「あ、やっ、いいですいいです、おいしかったし楽しかったし!ごちそうにまでなっちゃって・・・ほんと、ありがとうございました!」
「ちひろちゃん、帰ろうとしてる?」
「あ、はい、帰って資料の続き・・・」
ぎゅ。
抱きしめられた。
「・・・帰したくない。・・・帰さない!」
耳元で聞こえた声を信じられずにいた。
「荷物はそれだけでいいんだよね?」
里崎さんは、電話をかけた。
「・・・ええ、そうです。そこを変更で・・・、はい、良かった、よろしくお願いします」
「さ、行こう、すぐ近くだから」
里崎さんは私の手を握り、歩き始めた。
「・・・慣れてますね」
「初めてだよっ、こんなことするのっ!」
「だって・・・」
里崎さんはつないだ手をはなし、ふたたび私を抱きしめた。
唇が近づいてくる。
「あなただからだよ、決まってるじゃないか」
ドキドキしながら、唇を受け止めた。
缶コーヒーよりも温かい唇。
彼のばくばくしてる心音が聞こえた。
今日はもう仕事のことは忘れよう。
そう決めた。
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