引っ越し作業の依頼を受けてやって来た運送業者の男の子―その逞しい肉体と優しげな雰囲気に身体の奥がくすぐられ… (ページ 3)

「やっぱり、見知らぬ男と二人で引っ越しって、不安ですよね」

カイ君が笑いながらも顔を曇らせる。

何か誤解させてしまったみたいだ。

「女性にも安心して使ってもらいたいんですけど…すみません。色々行き届いてなくて」

「いえ、そんな…カイ君、かっこいいから、緊張しちゃうだけで…」

妄想の延長線上で、つい名前を呼んでしまい、変な汗が噴き出た。

「リコさんの方がかっこいいですよ。てきぱき動ける女の人ってあんまりいませんもん」

褒められたことより、名前を呼ばれたことに頭が真っ白になる。

「あ、すみません、慣れ慣れしく名前で呼んで。きれいな名前だなって思ってたから、つい」

私の沈黙にカイ君が慌てて言葉を継いだ。

「いいんです。名前で呼んだ方がチームワーク良くなりますよ」

焦り過ぎて変なことを口走った私に、なぜかカイ君が満面の笑みを見せる。

「そうですよね!引っ越しってチームワークが大切ですもんね」

名札つけたら呼びやすいですかね、なんて独りで言いながら、カイ君は私の新居の近くにトラックを停めた。

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