引っ越し作業の依頼を受けてやって来た運送業者の男の子―その逞しい肉体と優しげな雰囲気に身体の奥がくすぐられ… (ページ 2)
「えっと、大きな家電はないんですよね?」
「そうですね。大きいのは食器棚くらいかな」
ダンボールだらけの部屋で、目立つのはそれくらい。
でも、女手ひとつじゃ運べない。
「これくらいなら、僕だけで運べそうですね」
そう言って、カイ君はガラス戸を紐で固定すると、ひょいと食器棚を持ち上げた。
軽い足取りで階段を降りていく。
私はとりあえず、次に大きいカラーボックスを持って逞しい背中を追った。
「それは、こっちに積みましょうか」
カラーボックスも簡単に持ち上げてしまう腕は、よく見るとかなり筋肉質だ。
顔はベビーフェイスなのに。
そのギャップに体の奥がくすぐられて焦る。
内側に生まれた熱を無視したくて、私は作業に没頭した。
「じゃあ、行きましょうか」
「お願いします」
荷物を全て載せたトラックの助手席に乗って、二人で新居を目指す。
カイ君から汗と石けんの匂いが漂ってきてドキドキする。
バカみたい。
いくら五年近く彼氏がいないからって、欲求不満になり過ぎだ。
でも、きっと、今夜はカイ君の妄想で、自分を慰めてしまうだろう。
そういえば、ローターってどのダンボールに入れたっけ。
「次の交差点を左でしたよね?」
「え、あ、はい。左です」
よからぬことを考えていたせいで、声が上擦った。
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