白馬に乗った王子様に略奪されて、めちゃくちゃにイかされまくってしまったその後は… (ページ 3)
「だって、考えてることも、願望も、すべてがぴったりな自分の分身と、何を考えてるのかわからない別の個体と、どっちがつき合うの楽?」
「私の男バージョンがいたらいいのにって思うことはあるよ」
「だよね。それが僕らにはできちゃう。で、そこが落し穴なんだ。ここのヒトみたいに雌雄が別の個体で、無性生殖もできなければ遺伝子は多様化せざるを得ない。でも、僕らみたいに全く同じ遺伝子を持った分身同士で繁殖を続けていくと、将来的に絶滅のリスクが高くなるんだ。同じ欠点を持った遺伝子を複製しているだけだからね。それで今、別の個体と生殖行動をするためのいろいろな調査や研究をしてて…」
私の頭、やっぱりバグってるのかしら?
それとも、これは夢?
「レイって…一体…?」
「ヒトの生殖行動の研究者」
「ていうか、何者?」
「ああ、カンケイ動物から進化した生命体で、すごく遠いところから来た」
「…宇宙人?」
「まあ、そういうことになるかな。驚いた?」
「…そりゃ、驚いたけど…でも外見は私たちと同じに見えるから…」
「あ、光の粒子と空気圧でできた着ぐるみみたいなものをかぶってる。触覚はまだ改良の余地があるけど、視覚的にははほぼ完璧なんだ」
「へぇ…」
へぇ以外の言葉が出てこない。
「で、真帆ちゃんのこと、すごく気に入っちゃったからもう少しの間、研究に協力してほしいんだけど…」
「協力って?」
「僕とつき合って。この星の人がするみたいに」
「え、私でよければ」
なんだか滅茶苦茶な話だったけど、これも何かの縁と思い、レイに協力することにした。
*****
それから、レイとの同棲生活が始まった。
レイは優しくて、私のことは相変わらずポイントがかなりズレてるけどベタ褒めで、研究者らしく、毎日が質問攻めで、そして、肌や舌の触感が信じられないくらいに気持ちいい。
レイが事前に勉強してきたことはかなり偏っていたようで、王子様に略奪されたり、イケメンに強引に迫られるような恋愛をみんなが実際にしているわけではないし、また、女性が強い遺伝子を得るためにたくさんの人とセックスしたり、男性が自分の子孫を残すために他の男性の精子を掻き出したりって、人類学的にはそういう説もあるけど、みんなが一般的にしていることではないことも、一応教えておいた。
レイは強い日差しと物理的な衝撃に弱く、炎天下の外出や混んだ電車は避けなければならなかったけど、どこにも行かなくても毎日が新鮮で、楽しくて、レイが本物の彼氏になって、ずっと一緒にいてくれたらいいのにと思うくらいに、私はレイのことをどんどん好きになっていった。
学校から帰ってくると、レイはよく私のアパートの狭い中庭に座っていたので、私も一緒に座り、何時間もおしゃべりをした。
レイは、湿った土の匂いや感触が好きらしい。
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