既婚のSMパートナーを亡くした私。彼の息子から密会部屋の遺品整理に呼び出されて… (ページ 2)
その頃の私は、弁が立つことが自慢の怖いもの知らずの小娘で、何かと同僚と衝突することが多かった。
ただ彼に対しては、歯が立たない相手とわかっていたので、少しでも認めてもらいたくて、仕事に心血を注いだ。
そのうちに彼のアシスタントになり、仕事のあとに飲みに行く機会も増えた。
その日は少し飲みすぎていて、二軒目のバーでいつもは話さないような、性的な話をしていた。
何度もふたりで会っているのに、私に全く興味を示さない彼をからかってみたい気持ちもあった。
「なんか彼氏と長続きしないんですよね。ちょっと変態っぽいことをされそうになって、拒否すると、それ以上はされなくて」
「舞は強いからね」
「で、セックスがつまらないって、振られちゃうんですよ。本当は、もっと強く求められて、いろんな面で打ち負かされたいのに。どうあがいても敵わないような人とつき合えばいいのかも知れないけど」
私がそう言うと、彼は沈黙し、探るような眼で私を見た。
「縛られたり、叩かれたりして、徹底的に服従させられるのはどうかな。舞は本当はそういうふうにされたいんだよね。俺ならしてあげられるけど」
今まで見たことのないような捕食者のような目で見つめられて、身動きができなくなる。
「そんな…止めてください。冗談にもなってないですよ」
「そうかな。返事は一週間だけ待つから」
席を立とうとしたら、強引に唇を奪われ、もう完落ちだった。
それから一週間、彼に抱かれること以外は何も考えられなかった。
人目も憚らず、涙を流しながら帰途につき、家の前で会葬御礼の包みの中から清め塩を取り出すと、紙片が足元に落ちた。
父のことでご相談があります。
連絡ください。
蒼太 xxx-xxx-xxxxx
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「蒼太くん、この度は…本当に大変でしたね。ところで、相談したいことって?」
葬儀が終わり、三日ほど経ってから、蒼太に電話をかけた。
蒼太とは、彼の家に招かれたときにSNSのアカウントを交換し、しばらくメッセージのやり取りをしていたことがある。
高校受験を間近に控えていた蒼太が、私の母校に進学を希望していたからだ。
無事に合格はしたものの、学校に馴染めず気落ちしていた蒼太の話を聞いて、お姉さんっぽい気分で励まし、延々ととりとめもない話をした。
「舞さん、お葬式に来てくれてありがとう。実は、父の事務所の遺品整理を舞さんに手伝ってほしいと思って…」
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