横暴な客に捕まり乱暴な扱いを受けていたら…リセットされる嫌な記憶 (ページ 3)
店長を呼ぶ、という言葉を脅し文句で使うお客さんにロクな人はいない。
「かしこまりました。上の者を呼んでまいります」
ここは逃げるが勝ち。
わたしはその場を離れることにした。
今日は店長も社員さんもいないけど、とりあえず、誰か男性のスタッフに対応をお願いしないと。
「なんだよ。その態度」
スーツ姿の男性が再び、わたしの手首を強く掴んだ。
爪が食い込む痛さで思わず小さく、悲鳴を上げる。
「お、今の声、エロくていいねー」
茶髪の男性が、空気の読めない言葉を吐いた。
不安と恐怖、怒りと焦りで涙が浮かびそうになる。
「お客様、いかがされましたか?」
降ってきたのは、聞き慣れた優しい声。
利人さんの声。
「いや、この人がお酌するって言ったのに、してくれないから…」
利人さんの登場に、男性の声が尻すぼみになる。
「申し訳ありません。当店は居酒屋ですので、接待とみなされるサービスは提供できません」
「でも、この人が自分からするって言ったんですよ!」
「そんなこと…」
言ってないと言おうとしたら、背中に温かい手のひらが触れた。
たぶん、任せての合図。
コメント (0)