他人の不幸は蜜の味。セクシー悪女になったつもりで不倫デートを楽しむ私 (ページ 4)

「このまま、ずっときみと一緒にいられたらなあ」

「ええ、そうね」

でも、そろそろ終電の時間だ。

急がなくては。

それともまた、彼にタクシー代まで出してもらおうか。

そんなことを考えていると。

「家に帰っても、息が詰まるだけだ。妻とはもうずっと、口もきいていないよ」

彼が独り言のように呟き、私に縋り付いてきた。

あ、これは、よくない兆候だ。

こんなことを言い出したら、続く言葉は決まっている。

妻とはもう他人だ。

きみと一緒に暮らしたい。

妻と離婚して、きみと再婚したい。

――冗談じゃない。

彼と妻の生活を壊すつもりはない。

まして彼と結婚だなんて、一ミリも期待していない。

彼と会って楽しいのは、これが不倫というゲームであり、お互いに演技をしているから。

結婚してしまったら、すべてが日常になる。

そこに楽しい想像や演技が入り込む隙はない。

それに、こういう男は必ず、またやる。

彼が妻と離婚し、私と再婚したとして、その後は?

私となら、一生を添い遂げることができるって?

そんなわけない。

不倫の楽しさを知った男は、不倫相手と再婚した後も、必ず同じことを繰り返す。

そして今度は、私が見捨てられる妻の立場になるわけだ。

そんなの、ごめんだ。

この男とも、そろそろ終わりにしたほうがよさそうだ。

トラブルにならず、そっとろうそくの火を吹き消すように、関係を解消するには――そうね、彼に次の女をあてがうのが一番だ。

彼が新しい女に夢中になっている間に、私は次第に彼との距離をとり、彼の目の前からいつの間にか消えている。

それが一番、後腐れがない。

そして私には、彼からもらったアクセサリーやバッグなどと、楽しかった思い出だけが残るだろう。

しつこくしがみついてくる彼を適当になだめながら、私は頭の中で彼に紹介できそうな知り合いを何人かピックアップしていた。

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