理性も倫理も世間体も吹き飛ばし私をふらちにした意地悪な男 (ページ 4)
うすくながく、いっしょにいよう。
そう言われた日から、いくつか季節が過ぎた。
「だいたい、さ」
浩司さんは、汗ではりついた私の髪を直し、額に唇をつけた。
「始まってないんだから、終わらないだろ」
「・・・わかんない」
浩司さんの言うことのほうがいつも数倍小難しい、と思う。
忙殺の小さな隙間で、言葉を交わす。
中くらいの隙間で、お昼ご飯を共にする。
もう少し大きな隙間を捻出し、夢中で貪り合う。
・・・さっきのように。
愛されてる、わかってる。
だけどときおり、とても寂しい。
彼はしっかりとした腕で私の頭を強く抱きしめた。
「だーかーらー、千穂とは終わらないってことだよ」
「・・・もっとわかんない」
浩司さんの言うことのほうがいつもやっぱり数十倍、小難しい。
「ふらち」という言葉は、初めて抱かれた日、彼に教わった。
「こうやって・・・夫でもない男にこんなに触られて・・・無防備にそんなに気持ちよさそうな顔して・・・そういうのを、不埒っていうんだよ。ふ、ら、ち。漢字で書けるか?」
・・・そう叱られ、私は、たくさんのしずくを落とした。
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