「意地悪されたくて、猫の飴を買ってるんでしょうが」年に一度、夏祭りにだけ手に入る欲しいもの

キャラクター設定

登場人物をお好きな名前に変更できます。

milkyに掲載の小説は当サイトが契約した作家によるオリジナル作品であり、著作権は当サイトにて保持しています。無断転載、二次利用は固く禁じます。不正な利用が確認された場合、法的措置を取らせていただきます。

「意地悪されたくて、猫の飴を買ってるんでしょうが」年に一度、夏祭りにだけ手に入る欲しいもの (ページ 1)

祭囃子の音、提灯の光、屋台から漂う匂い。

「何の飴にしましょうか」

近所の夏祭り、わたしは去年も一昨年も買った飴細工を買う。

「猫がいいな」

ドキドキしながら、注文した。

「…今年もですか?」

「うん」

それは、わたし達だけの秘密の合図。

「分かりました」

精悍な顔つきの職人さんが、静かに飴細工を作り始めた。

白い飴が柔らかく形を変えていく。

尻尾や耳を作る手さばきに思わず見惚れる。

「はい、お待たせしました」

白い猫に三毛の模様を描いてから、職人さんが飴を差し出した。

「ありがとう」

五百円を払い、わたしは屋台に背を向ける。剥き出しのうなじに熱い視線が触れた気がした。

コメント (0)

コメントを書く