無愛想で腹が立つ先輩の心中を目の当たりにして…甘くイジワルに愛される (ページ 9)

「そんな風にされたら、俺、ますますしゃべれなくなっちゃうよ…。」

…。

長谷川さんは急に立ち止まった。

そして、じっと見つめてきた。

その目はすっごく不安そうで、今にも消えちゃいそうなぐらい寂しそうで、

私が大好きな長谷川さんの目だった。

「長谷川さん…」

ぎゅっ。

彼の腕は痩せていて、ちょっと貧弱だったけど、でも、すっごく優しかった。

欲しかった感覚だった。

夢みたいな瞬間が、卑しい店のギラついたネオンに照らされていた。

それが現実であることをはっきりと焼き付けるかのように。

暖かい抱擁が解かれると、二人は見つめあって、はにかんだ。

初々しささえ感じながら、遠慮がちに俯いた。

「春野…この後って…」

「あ、あぁ、まあ…会社に戻って、残業を…」

ふいに顎に手が添えられた。

はっとした瞬間、唇が奪われる。

舌で深く、犯されてしまう。

息が苦しくなるぐらいだった。

「はぁはぁ…」

ようやく解放されたと思ったら、また彼に見つめられた。

「お願い。サボって。もう我慢できないよ…」

こんな上司の頼みを断れるほど、私は優秀な部下じゃない。

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