無愛想で腹が立つ先輩の心中を目の当たりにして…甘くイジワルに愛される (ページ 7)
店を出ると、長谷川さんは大通りを駅に向かって歩き始めた。
家電量販店や百貨店の隙間に居酒屋がびっしりならんだ通りを行く。
なんとなく、街がギラついていた。
まあ、それも、いつものことなのだけれど…いつものことなのだけれど…
その日は妙に心がざわざわしていた。
多分、いや、前を歩くあの男のせいに間違いないのだけれど。
「春野。」
「はい。」
名前をよばれたら、急いで隣に行く。
なんとなく、そうしたほうがいい気がするから、それが私のルールだ。
「俺さ、人が食べてるの見るの好きなの。」
え…。
いきなり飛んできたつかみどころのない話題。
「そうなんですか…」
驚いたのはそればかりではない。
「春野は飯とか、よく奢ってもらってるの?」
よくわからない質問…じゃなくて、驚いたのはそこじゃない。
自分のペースで歩いてるのに、長谷川さんが全然前に行かないのだ。
私と同じ速さで、長谷川さんが歩いている…。
いろんなことを考えながらも、とりあえず質問に答える。
「は、はい…多少は」
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