無愛想で腹が立つ先輩の心中を目の当たりにして…甘くイジワルに愛される (ページ 6)

ぱくっ。

子供みたいにそれを頬張った。

「ふーん。こういう味ね。」

デミグラスソースが唇の際に残っていた。

すっかりあっけにとられた私をみて、長谷川さんがいう。

「どうした?早く食べろ。」

「あ…すみませんっ。はい。いただきます。」

気をとりなおして食事を再開する。

結局、その後、長谷川さんが話題を振ってくることはなかった。

そればかりか、すっかりペースを崩された私は、途中何度もカチャンとナイフやフォークをお皿に当ててしまって、ちょっぴりお行儀が悪い感じになってしまった。

だから、気づかなかったのだ。

カチャンと音が鳴るたびに、長谷川さんが含み笑いを浮かべていたことになんて…。

食事が終わると二人は店を出た。

「ありがとうございましたー。」

アルバイトのお姉さんが時給950円の笑顔で送り出してくれた。

妙に明るかった。

それだけではない。

街のネオンが明るかった。

コメント (0)

コメントを書く