クールな後輩を乱したくて仕掛けた大人の駆け引きに翻弄されるのは― (ページ 2)

飲み会は楽しく終了し、皆三々五々に夜の街に散っていった。

「今日は南主任が介抱してくれるんですよね?」

まだ終電に間に合う、と、歩き出そうとした私の手を掴んだのは成宮の大きくて冷たい手だった。

「介抱って――」

私は背の高い成宮を見上げて笑ってしまった。

「ちっとも酔ってないよね?」

「酔ったふりして甘えた方が良かったかな。いつもの主任みたいに」

平然とした口調で問われてかぁ、と頬に朱がさした。

どこまで彼に見抜かれているんだろう。

ちょっと、いいなぁって思ってることとか。

その長い指にいつも目が釘付けになっていることとか。

「私、そんなことしてないよ」

「覚えてないだけですよ。それとも、無意識に俺に甘えてるんですか?」

感情のみえない声は、私を煽っているんだろうか。

いや、そんなことあるわけないか。

「どうして私が成宮に甘えないといけないのよ。酔った勢い」

「そっか。じゃ、俺が介抱しなかったら別の誰かに甘えるんだ。小悪魔なんですね、南主任って」

成宮にとってはなんでもない雑談なんだろう。

体温の感じない指先。

感情の見えない表情。

そして、いつもと変わらぬクールな声。

彼は、ベッドの上でも同じようにクールなんだろうか。

どうしても、消せない心の奥の火がどんどん大きくなっていく。

「そうだよ。どんだけ小悪魔か試してみる?」

そう言って見上げると、彼の冷たい瞳が少しだけ揺れたのが見えた。

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