クールな後輩を乱したくて仕掛けた大人の駆け引きに翻弄されるのは―
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クールな後輩を乱したくて仕掛けた大人の駆け引きに翻弄されるのは― (ページ 1)
「成宮、今日は飲むよね?」
「俺が飲んだら、誰が主任を介抱するんですか」
相変わらず、何も興味がないような眼差しで成宮が言う。
私より二年後に入社したから、今27歳。
男前で、クールで、仕事もバリバリできるが浮いた話は一つも聞いたことがない。
いわゆる、いまどきの草食系男子というやつか。
飲み会では一切アルコールを飲まない。
今日は成宮の研究が発端で新商品の開発に結び付き、その祝いの打ち上げだと言うのに、頼んだのはウーロン茶だ。
「じゃあいいよ、私断酒するから。今日は成宮が飲みなよ」
自分が酒癖が悪いのは自覚していた。
私は、成宮が頼んだウーロン茶と自分の目の前のまだ手を付けてないビールを交換し、課長に乾杯の音頭を取ってもらった。
「南主任。そういうの最近じゃアルハラっていうんですよ」
別の後輩の言葉にハッとする。
「――もしかして、成宮、アルコールが飲めないの?」
そう言って彼を見た時は、もう、ビールに唇をつけた後だった。
彼は平然とした顔で言う。
「そんなことないですよ。家では、毎晩飲んでます。専らワインメインですけど」
「じゃ、ちょっと高級なワイン頼んでもいいですよね、課長?」
「予算内で収まれば」
課長の返事は、業務内でも飲み会でも同じらしい。
課長以下、総勢十名。
私たちはくすりと笑うと、メニュー表を取り出してじっくり眺めた。
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