八年ぶりに再会した塾の先生。大人になった私を見てほしいと、先生を受け入れてしまう私。 (ページ 3)

「ごちそうさまでした」

「大丈夫か?いい感じで酔ってるけど」

「大丈夫です。いい気分です」

「そっか、俺も飲みたくなるよ」

「じゃあ飲みましょうよ」

 まだ帰りたくない。もう少し祥平との時間を楽しみたい。そんな気持ちと、ほんの少し湧きあがった祥平への独占欲が紗香を強気にさせる。

「俺の部屋で飲むか?あまり片付いてないけど」

「いいんですか、ぜひ」

 金曜日の夜、ほろ酔いの女が男の家に行く。何も起こらないはずがないと二人は知っている。それでもこの偶然に昂ぶりを隠せない。

 祥平のマンションまで、二人は無駄にお喋りをした。他愛のないどうでもいい話題で、興奮しすぎないよう必死で抑えていたのだ。

 生徒と先生という関係性の尊敬していた男性と二人きりの空間。その興奮は紗香をすでに濡らしていた。きっと紗香から雌の匂いが漂っていたに違いない。

 玄関のドアを閉めると、祥平は前を歩く紗香を後ろから抱きしめた。

「紗香…」

「先生…」

 祥平はなかなか力を緩めようとはしない。

「先生、ちょっと暑いんですけど」

 紗香がくすっと笑いながら、恥ずかしさを隠すため幸せなハグから逃げる。

「暑いか、ごめん」

 照れた様子の祥平が可愛いと、紗香は思っていた。

 そのまま部屋に進み、冷静を装って二人でソファーに座る。これからどうなるのだろう。きっと同じことを考えていたに違いない。

「紗香は俺のお気に入りの生徒だったんだ」

「私ですか?地味で目立たなかったのに?」

「髪がきれいで、ほんとにいい匂いがしてたんだよ。高校生なのにさ。だからよく覚えてて」

「あー、だから今日も髪型チェックから入ったんですね。知りませんでした」

「言えるわけないだろ。生徒と恋愛関係なんてご法度だし」

「じゃあ、今はどうですか?」

 静寂の中で視線が絡み合う。カチカチと響く時計の音が、まるで何かのカウントダウンになっているようだった。

 祥平が紗香を抱き寄せた。

「いい香りだよ。しばらくこうしててもいいか?」

「はい…」
 
 紗香は不思議な気分だった。ほんの数時間前まで、一人でビールを飲んで家でゴロゴロと過ごす予定だったのに、なぜか男のぬくもりを感じて喜んでいる。

 それも、八年ぶりの再会を果たした先生と呼ぶ男の胸の中で。

「先生、やっぱり先生暑すぎです」

「そっか、興奮してんのかな、ごめんごめん」

「脱いでください」

「え?」

 その一言は完全に祥平の何かを壊し、そのまま何も言わず紗香を見つめたまま、ささっとシャツを脱ぎベルトを外した。

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