忘れられなかった元彼と再会して、必死に閉じていた蓋が開けられる夜 (ページ 3)
さっきまで伏し目がちであまり目が合わななったのに、熱っぽい視線が突き刺さる。
今度は私が目を逸らしてしまう。
「…翔とは、嫌」
「どうしてだ?」
「どうしてって…自意識過剰なの?」
そこで、翔がムッとした表情をした。
街中なのに、人も大勢歩いているのに手を引かれ抱き寄せられた。
「ちょっ、翔なに」
「目が合うと、赤くなったりするの気付いてる?期待すんだよ。ほんとに嫌だからか?忘れられなかったのはオレだけ?…それにな、お前昔から嘘つく時右手で左腕掴む癖があんだよ。それで嘘だって思った。っていうか、期待するよあんなの」
至近距離で言われて、耳のそばで放たれる低音に、肌が粟立つ。
「…だってまた付き合うなんてしたら、終わりが来るのが嫌じゃん」
ボソッと言っただけだった。
でも、至近距離では容易く聞き取れてしまったみたいで…
「えっ、翔!?」
翔に手を引かれる。
今日はペースを合わせてくれやしない。
身長差が20cmもある人の早歩きなんて私は小走りしないといけないくらい早い。
「ねえっ!どこ行くの!?」
「終わりなんて、別れなんて来ないって教えこみに?」
答えになってない…!
っていうか、この向きって確か…!
この後のことが想像出来てしまって、心臓は早るしボンッと音がなりそうなほど私の顔が熱くなった。
*****
ーーーーバタンッ
「んぅっ!」
すごく性急なキス。
有無を言わせず上を向かされて、首裏と背中には手が回されて、目の前には眉間に皺を寄せた翔。
整った顔立ちをしてる翔は、眉間に皺が寄るのも色気がすごくて、むせ返りそうになる。
っはぁ、はぁっ
二人とも早足で来たせいなのか、久しぶりのこの体温に熱がどんどん上がる。
何度も角度を変えて、食べられそうと感じるほど本能で求められていることを感じ取れるキス。
柔らかい舌で唇をなぞられるけど、無理やりこじ開けて入ってこようとはしない。
わたしが息が上がりながらのキスだからか、時々フッと笑い声が漏れるのも、変わらない…
「そのトロンとした目、ほんとたまらない」
懐かしくて、熱い視線に耐えきれない。
私は顔を背けた。
「…逃げんな。ちゃんと聞け」
「やだ」
「なぁ、頼むって」
「〜〜っ、嫌!」
やだ。忘れるのにすごく時間がかかったのに、簡単に思い出させるのはずるい。
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