私にドSな彼はある日の飲み会後に普段見せない一面を見せてきて… (ページ 3)
そう言うと部長は、私の脚をさわさわとまさぐってきたのだ。
立場上強くも言えず、しかもこんなことをされるのは初めてだったので、どうすることもできず、私は黙って下を向いていた、その時だった。
「おーい結奈!トイレ空いたぞー。お前酒飲むと頻尿なんだからはよ行ってこいや」
「…竜、先輩…」
「…ちっ、もう少しだったのに…」
「…お、お手洗い行ってきます!」
出てくるときに竜先輩に頭をなでられた。…助けてくれたってことで、いいのかな…?
少し、悲しかった気持ちが浮ついた。
お手洗いを済ませると、通路に竜先輩が立っていた。
「…部長、俺嫌いなんだよね」
「…私も、嫌いです。…今日で、もっと嫌いになりました」
「そうなの?俺はてっきり感じてんのかなって」
「…!!そんなわけ…」
「だってあんな顔してたら、誰だってそう思うって」
助けてくれたのは、間違いだったみたいだ。
やっぱりこんな時でも、先輩は私のことをからかうんだ。
「…感じて…———なんか」
「…ねえ、抜けない?俺会社の飲み会嫌いなんだよねー、媚び売る奴がどうしても目についちゃって」
「え…、それって」
「2人で飲みなおそってこと。ダメ?」
また悲しい気持ちになったのに、先輩の意外過ぎる提案に、私はあっけにとられてしまった。
「いや…、いい、ですけど…、逆にいいんですか、あたしなんかで」
「俺はお前がいーの。ほら行くぞ!」
「…って、ちょ、お金!会費まだ集めてないですよ!?」
「いっちいちオメーはうるせえなぁ。そんなもんおまえの分と一緒に幹事に渡してきたわ。わかったらとっとと来いや!」
「はぁ!?展開早すぎ…!」
先輩はそう言うと、私の手を引いて秒速で店外に連れ出した。
「何飲むどこいく?」
「んー、私もここら辺詳しくないんですよね、とりあえず明かりついてるとこ入りますか?」
「コンビニで買って俺んち宅飲みでもいいけど。どお?」
「…え…」
思っても見ない言葉だった。
嬉しいのはやまやまだが、こんなシチュエーションで彼女と修羅場になりたくないという気持ちもあった。
「だいじょーぶうち誰もいないから!そうと決まったらコンビニ行くぞ!夜の道は寒いんだからな!」
「…わかりました…」
そう言うと私たちはコンビニで酒とつまみを買って竜先輩の家に向かった。
絶対にないと思っていたことが、今ここで起きている。
23年間、ろくに恋愛してこなかった私は、今夜、夢のような時間を過ごすんじゃないかって。そんな幻想を、先輩の家に向かう道中、ずっと考えていた。
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