「成人式の日に展望台の上で」口約束が守られた時、想いを伝え合うのは― (ページ 3)
「亜弥」
かすれた声でそう呼ばれたときは飛び上がるほど驚いた。
そして、すっかり大人になったスーツ姿の良介がそこにたっているのを見つけた時、
まさか、という想いとやっぱり、が混じった
不思議な感覚におそわれた。
次の瞬間、良介が景色を見ている私を後ろから抱きしめた。
ふわり、と私を包みこむ。
良介のにおい。私は体の向きを変え、良介に自ら抱きつき、良介のにおいを胸一杯に吸い込む。
言葉は要らなかった。
どちらからともなく唇を重ねる。
はじめは遠慮がちに、次第に激しく。
舌と舌とをからめあって、抱き合う腕にも力がこもった。
唇はお互いを求め合っていた。
お互い相手がどれだけこの五年間自分を想ってくれていたか、キスで伝えあった。
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