発作的な現実逃避先で出会ったコンシェルジュに快感だけの世界に導かれる (ページ 4)
「あ…会社に電話してないや…」
急に現実を思い出して、大きな溜息を漏らしてしまった。
その唇に長い人差し指が触れる。
「そんな溜息をつかせるなんて、千星様の会社は良い会社ではありませんね」
「まぁ流行りのブラック企業なので…」
「会社への電話は私がいたしましょう」
「え…?」
わたしの理解が追いつく前に、利人さんはスマホを取って電話をかけた。
父親になりすまして病欠の説明をしてから、悪戯に微笑む。
「さぁ、これでもう、当ホテルを楽しむ以外に選択肢はございませんよ」
贅沢な時間が目の前に差し出された。
ゆっくりとお風呂に入り、オイルマッサージを終えた頃には、身も心も解れていた。
「他に、お望みのものはございますか?」
脱力してベッドに横たわるわたしに、利人さんが優しく問いかける。
「抱きしめて、ください…」
誰かに優しく抱きしめて欲しい。
すり減るだけの日常の中、わたしが望むこと。
「かしこまりました。失礼いたします」
利人さんは躊躇うことなく、裸のわたしを自分の胸へと抱き寄せた。
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