七夕がもたらした、夢と愛 (ページ 4)
雨雲は去り、陽の光で白んでくる空。
奮い立たせるように私を立ち上がらせ、乱れていた心ごと服を整え、鬱蒼とした気持ちまでも背中の泥と共に払い落とし、拾い集めたデッサン画を鞄に入れて渡してくれた。
「…また会いたい…貴方の名前…教えて…」
するとその男性は、私達の情事を見守っていた葉っぱをちぎり、私の手の中に収めながら最後のキスをした。
「七夕は終わっちゃったけど…きっと千夏ちゃんの夢は叶うよ。ほら、前を向いて歩き出して!」
私の背中を押す。
それでも名残惜しくて振り返ると、彼は優しく微笑みながら手を振っている。
その姿を目に焼き付け、次こそは振り返らずに歩き始めた。
あれから3年。
私はひたすらに勉強を続け、本格的にデザイナーとしての道を歩き始めた。
あれは一夜限りの思い出……再会出来るなんて思っていないし、あの人も振り返る事を望んでいないだろうと、あの公園へ足を運ぶ事はしていない。
……本当は七夕が来る度に思い出すけれど。
今日もそう、社内に飾られた笹の飾り。
足を止め、用意された短冊に今年も同じ事を書く。
ふと、資料に挟んでいた栞を落としてしまった。
拾おうとすると、別の手が一足先にそれを拾う。
「葉っぱを押し花のようにした栞ですか、珍しいですね」
「あ、ありがとうございま…」
「ね、千夏ちゃん?」
優しく微笑んでそこに立っていたのは。
「本当にデザイナーとして頑張っているのを知った時は嬉しかったよ」
声にならず涙を流しそうになった私を、あの日と変わらない優しさで抱きしめてくれた。
「梶さんがこの世界の先輩だったなんて私もビックリしたわ」
ホテルのベッドの上で、キスをしながら私の服を脱がす梶さんにそう言うと、
「あの時は僕も下積みの新米だったからね。お互い軌道に乗り始めたら会いに行こうって決めてたんだ」
と指で胸と秘部を弄りながら答える。
「僕の言った通り、千夏ちゃんの夢、叶ったでしょ?」
「あっ…ん…葉っぱをお守り代わりに頑張ったから…」
「昔はカジの葉を短冊代わりに使ってたらしいからね。あの葉っぱはその辺のだったけど、まさか栞にしてくれてたなんて」
ぐちゅぐちゅと私の中を掻き混ぜる手を止めずに、梶さんは嬉しそうな顔を見せた。
その余裕に少し反抗心が芽生えて。
「ねぇ、私の夢は叶ったけど…あの日は雨で天の2人からは見えてなかったと思うよ」
「あれは冗談半分だよ。千夏ちゃんは自分で頑張って夢を叶えると思ってたし、実際にそうでしょ?」
「それはそうだけど…。なぁんだ、本当は見られてるのが恥ずかしくて最後まで出来なかったんだって思ってた」
からかうように言うと、私の秘部を弄っていた手を止めて「…ふぅん?」と呟いた。
「じゃあ、今日は晴れてるから今度こそ見られちゃうね。恥ずかしくてまた最後まで出来ないなぁ」
ちょっと悪戯っぽく笑いながら、敏感な突起を掠めるように弾いては離れ、焦らし始める。
「んはっ…今日はホテルの中だから…晴れてても見えない…よ」
ビクビクと反応しながら答えると、
「でも僕達からもせっかくの天の川が見えないね。僕は恥ずかしいけど仕方ないなぁ。千夏ちゃん興奮してたし、また外でする?」
梶さんは少し考えてからニヤニヤと聞いてきた。
「んっふぁ…それでもイイよ…梶さんを見せつけて自慢しちゃいたい…」
「…やっぱ止めた。こんなに可愛い千夏ちゃんを見ていいのは僕だけだか…らっ」
ずくんっ
ずっと待ち焦がれていたモノが私の中へと挿る。
ぐちゅんぐちゅん
「あっん…熱い…!」
愛しさを含んだ眼差しを向けながら、私の中に打ち付けるリズムを刻む梶さんの背中に腕を回す。
「天の川が見れないのは残念だけど、やっと千夏ちゃんとこうして…」
「んっ…大丈夫だよ…今度こそ最後までしてくれたら…私の中を天の川みたいに白くてキラキラした梶さんの愛液で満たしてくれたら…」
私の奥を突き上げながら「今日は千夏ちゃんの方が何枚も上手だなぁ…」と梶さんは頬を膨らませた。
その大人の余裕を崩せたと思ったのも束の間、
「悔しいからいっぱいイかせていっぱい出してあげる…覚悟してね?」
そう言って、あの日と変わらない梶さんの優しさ全てで、何度も何度も私を満たしてくれた。
…『もう1度あの人に会いたい』
七夕は私の”お願い”もちゃんと叶えてくれた。
『ずっと一緒にいたい』
……来年の短冊にはそう書こうと心に決め、私はそっと微笑んだ。
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