夜桜の下で出会った不思議な男性との優しい一夜の物語 (ページ 3)

「いままでも見てたってこと?」

「そんな怪しまないで。俺はここから君を見ていただけだから、ストーカーとかじゃないよ。いつも、ここを疲れた顔で歩いていただろう」

そして彼は小さい声で「昔はもっと、楽しそうだったのに」と呟いた。

なんで知っているの・・・?

私は、奇妙な安心感に包まれた。ふいに、涙がこぼれた。今まで抱えていた不安や悲しみが、溢れだしたようだった。

彼は私を抱き締めた。

「俺が見ていてあげるよ。どんなときも。だから泣かないで、ぼたん」

私の名前まで知っている・・・。彼の腕の力が強まる。

「どうしたら、君を癒してあげられるだろう」

私たちは静かに見つめ合った。

「私を見て。知って。もっと。お願い」

「・・・全部」

「そう、全部」

彼は、私のおでこに口付けた。

「全部って、君の…ぬくもりも?」

私は、ただ頷いた。

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