満員電車の中、「特訓ね」と触れてきた年下男子の巧みな愛撫に逆らえない私。

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満員電車の中、「特訓ね」と触れてきた年下男子の巧みな愛撫に逆らえない私。 (ページ 1)

「次は○○○、○○○。降り口は左側です」

新卒で就職してから半年。第一希望の業界に入れて、なんとか仕事には少し慣れてきたように思う。

けれど、この、通勤時の満員電車だけは慣れることがない。

身長が152cmしかない私は、通勤初日に懲りて、いつもはもっと早い比較的空いている時間帯の電車に乗っている。

けれども今日は疲れがたまっていたのか、うっかり寝坊してしまった。

会社には充分間に合う時間だけど、電車は通勤ラッシュのピークで超満員。

なんとか乗車はできたものの、オッサンたちの背中に埋もれていて暑いし息苦しい。

少しでも呼吸が楽になるように上を向く。その時、お尻の辺りに人の手のひらの感触があった。

(え? 痴漢…?)

たまたま手が当たっただけかもしれない。そう思って、腰を捻ってお尻を逃がす。

その手は何のためらいもなくついてきた。

(絶対痴漢だ…!)

気づいてしまってパニックになる。

「痴漢です!」と叫ぶべきだとわかっているのに、私の喉は恐怖に震えるばかりだった。

私があたふたしているうちに、痴漢は調子に乗ったのか、今度は手だけじゃなくて体ごと密着させてきた。

生温い、臭い息が耳元から首筋にかかる。はあはあ、と荒い息遣いが聞こえる。気持ち悪すぎて吐きそうだ。

(だ、誰か助け…)

助けてくれそうな人を探して周りを見回してみるけど、当たり前にみんな自分の世界に入っていて、私の窮地に気づく人は誰もいない。

私を助けられるのは私しかいない、そう思って、勇気を振り絞って声を出す。

「や、やめてくださ…」

「ねぇ、オッサン。俺のツレに何やっちゃってくれてんの?」

蚊の鳴くような声で拒絶しようとした瞬間、私のお尻から違和感が消えた。気持ちの悪い呼吸音も消えた。

涙目で後ろを振り返ると、おそらく私に痴漢していたのだろうオッサンと、その腕を捻り上げた大学生っぽい男の子がいた。

「違う! 私は何も…!」

「オッサン、嘘は駄目だよ、嘘は。俺見ちゃったし。なんなら動画もあるけど、確認する?」

男の子が自分のスマホを見せつけると、痴漢のオッサンは急に態度を変え、急にぺこぺこし始めた。

「す、すみませんすみません。ほんの出来心で…!」

「あのさ、そもそも謝る相手が違うよね?」

男の子が呆れたように言う。オッサンがこちらを見た。おそらく50代だろうオッサンの顔は真っ青で、目に見えてわかるほどに大汗をかいていた。

ぎょろぎょろとした大きな目が、媚びへつらうように私を見る。

当然、許してくれるよね? と言わんばかりの表情に、おなかの底から怒りが湧いてきた。

「許すわけねーだろぼけぇ!!」

気づけば私は、大声を張り上げると同時に、オッサンの足をヒールで思い切り踏みつけていた。

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