仕事の慰安旅行で行った先には元アイドルがいて、彼がいると知らずに露天風呂に入った私は (ページ 2)

 真夜中の0時。私は眠れないで、布団の中をゴロゴロしていた。

 どうせ眠れないのなら、温泉があるんだし風呂にでも入るか。そう思い、私は準備をした。

 風呂場に着くと、予想通り誰もいなく貸し切り状態だった。しかも、露天風呂も誰もいないようである。

 私は体を流し、白く煙る湯の中へ勢いよく飛び込んだ。

「わっ!」

 私以外にいないはずなのに声がしてびっくりしてしまった。右側を見たら、顔を拭く理人の姿があった。

「なっ…!」

 私はますます驚いて身を引いてしまう。当然ながら、私は何も身に着けていない訳で…。

 この濃い白い湯けむりが体を隠してくれるおかげで助かった。

 それにしてもどうして理人がここに?

「露天風呂は男女混浴なんですよ。しかも今は僕の貸し切りとなっていまして」

 貸し切り? では私は出なくてはならない。

 出ようかと立ち上がると、不意に右手が取られた。え、何?

「そのままで結構ですので、一緒に入りませんか?」

 その言葉には強い力があり、私は大人しく湯の中に座り直した。

「あなたは純粋に僕に気が付かずに入って来たようですね」

「普通そうでしょう? 違うことでもあるのですか?」

「ええ」

 けむりの中で見る理人の顔はほんのり赤くなっていて、まるで初心な少年のような顔だった。つい、守りたいと思ってしまう、そんな顔だ。

「僕がこの旅館で湯治をしていることを何人かのファンに知られてしまって、一時期は旅館の人たちの迷惑になってしまったこともありました」

「そう、だったんですね」

「僕が結婚していることは?」

 私はこくりと頷いた。

「そうですか。実は妻だけでは満足できずに、そのファンたちもいただいてしまったんですよ。もちろん引退してからですけど」

「ええ!?」

 急に話の展開が変わってきて不穏な空気を感じ始めた。

「もちろん、あなたがそうしたいからこの湯に這入って来た訳ではないことは分かっています」

「待ってください。どうされたんです?」

「僕は女性を相手にしないとどんどん溜まってしまうんです」

 彼の言っていることはつまり、私と交わるってこと? そんな初対面の人とセックスだなんてどうかしている。

 ファンなら喜んで体を差し出しただろう。でも、私はファンではなくただ有名人として知っていただけだ。

(いや、待てよ…?)

 私は思い直した。元だけど、有名人とセックスできるなんてそうそうない。

「いいですよ」

 了承をした。

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