社内に彼氏がいる事を隠してきた。別の社員に彼女が迫られて彼氏が取った行動とは (ページ 2)
「聖奈ちゃん…あのさ」
「はい?」
「…本気なんだ、だか」
「聖奈。聖奈のとこの部長が用があるって探してたぞ」
「あっ、栄司くん!」
「なんか急ぎだったみたいだから早く行った方がいい」
「は、はいっ!先輩ありがとうございます!あとは自分で持てるので大丈夫です!」
「…」
若干肩を落とし気味の先輩。
この男が聖奈にアプローチかけてるというのはチラッと友達から聞いていたため、二人でいるところを見かけた栄司はたまらず声をかけてしまったのだ。
部長を理由にしたが、聖奈に用があると言ったのは嘘だ。
それほど栄司は焦ったのだった。
含みのある言葉をかけるのもためらわれた栄司は、ポーカーフェイスのままその場を去った。
その内側では、横を通っただけでも香った聖奈の花の香りへの安心と同時に、不安にかられていた。
ただ、若干の違和感を感じた先輩は翌日、聖奈に畳みかける。
「聖奈ちゃん、食事の時間が取れないなら途中まで一緒に帰ろう!話があるんだ」
「先輩すみません…困ります」
「そこをなんとか、少しでいいんだ」
会社のエントランスにいた先輩が、出社した聖奈に声をかけた。
少し後ろから歩いてきた栄司も、当然その場面は目の当たりにしている。
明らかに告白をすると分かるアプローチに、社員たちの目が聖奈たちに向かう。
聖奈は断り方を見つけられずに黙っている。
男性社員たちも、羨むような、なんとも言えない視線を送っているもの多数…
「先輩。そろそろ勘弁してやってください」
「…悪いけど今、俺聖奈ちゃんと話してるんだけど…」
「悪いですけど、帰りも送っていただかなくて結構です。俺がちゃんと家まで一緒に帰りますから」
その言葉に、エントランスにいた人たちの視線が一気に3人に向けられた。
シーンとするエントランス。
「…は?俺、聖奈ちゃんは社外に彼氏がいるって噂で聞いてんだけど」
(彼氏がいるとは聞いてて口説いてたのか…)と栄司はうなだれ半分、怒り半分だった。
「俺が聖奈の彼氏なんです。だから聖奈にちょっかい出すのやめていただけますか」
「ちょっと、栄司!話しちゃって、い…いいの?」
「仕事に私情を挟むように思えて、俺達2人で決めて秘密にしてきたんですが…この通り聖奈は疎いし断るのも下手ですし。何よりここで彼氏がいるって証明してた方が俺も安心できますし」
栄司に肩を抱かれ引き寄せられた聖奈の赤くなった顔を見たら、嘘ではないことは誰の目にも明らかだった。
「先輩も、聖奈は俺のなので諦めてください」
「…そっか、本当みたいだね。ごめんね聖奈ちゃん困らせたね」
「…すみません、お応えできなくて」
そのまま背を向けて先輩は仕事に向かった。
その日からしばらく、社内は栄司と聖奈の話題で持ちきりだったことは言うまでもない。
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