十年越しに再会した後輩と、お隣さんになってお風呂エッチしちゃいました。 (ページ 2)

「先輩」

「どうしたの?」

「あのこの辺知り合いが全然いなくて寂しいなーって思ってました。けどまさか先輩と隣なんてびっくりです。…よかったらうちでその弁当食べていきませんか?」

もう時間は十時になろうとしている。

時間帯を考慮して、声を押さえているのは彼に常識がしっかり身についていることのように感じた。

身元を全く知らない人なら断りを入れるより先にドアを閉めただろう。

金曜日にひとりきりの寂しさとか、十年ぶりという懐かしさが私の好奇心のドアを叩く。

「うん、いいよ」

「やったー。ひとり飯寂しいんですよね。どうぞ」

「お邪魔します」

 招き入れられて、遠慮がちに玄関に足を踏み入れる。

そこから見える景色は、私の部屋とは左右対称だった。

玄関にもいくつか段ボールが積まれていて、本当に今日引っ越してきたことがうかがえる。

「散らかっててすみません」

「大丈夫。土日荷解き手伝おうか?」

「え、いいんですか?」

「うん。暇だし」

八畳の部屋にはベッドと小さなテーブルにテレビ、そして段ボールがたくさん積まれている。

上野くんの下げていたビニール袋はコンビニのものだったらしく、そこからビールとラーメンが出てきた。

「温めますか?」

「出来立てだから」

「俺もそっちにすればよかった」

「ここ美味しいからオススメだよ」

ふたりで出来合いをつつくのは不思議な感じだけど、話を始めれば思い出話に花が咲いた。

十年という時間を気にしたのは、私の杞憂だったのかもしれない。

「そろそろ帰るね」

お酒も開けると、楽しさは大きくなっていく。

けれどそこはなんとか理性で踏みとどまる。

楽しいからって、そのまま明日をここで迎えるわけにはいかない。

しかし立ち上がると、ふと指先に温度を感じた。

それが上野くんの指先だと気づくのに、たっぷり数秒かかってしまった。

離れるべきなのか。握り返すべきなのか。

私は答えも持ってなくて、どうしようかと脳みそをフル回転させた。

「先輩」

「…」

「先輩知ってました? 俺高校のときずっと先輩のこと好きだったて」

「…」

もう五年以上も恋愛はご無沙汰だ。ただあのときのことを思い出す。

生徒会で一緒だった上野くん。

夏の日に一度だけふたりきりになった。

口にしようとした言葉は、何度も心の中で繰り返してた。

言葉にするには儚くて、少しだけ首を縦にふる。

するとただ触れていた指先は、明確に手首に触れた上野くんの手に力が入った。

そのまま抱きつくような形になり、上野くんの胸に飛び込む。

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