さようなら、私の愛しいキラキラ君 ― 切ない不倫の恋の行方は…

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さようなら、私の愛しいキラキラ君 ― 切ない不倫の恋の行方は… (ページ 1)

「これっきりだよ、先生」

 ミチが呟くように言った。

 「何で?ヤダよ」

 隣に寝ていた若い男が起き上がりながら言った。

 「先生は先がある人なの。わたしみたいなオバサンの相手なんかしてちゃダメ」

 「ミチさんはオバサンじゃないよ。大人の女性だよ。それにすごく、かわいらしい」

 彼の名はタケシ。ミチより十歳も若い。タケシは歯科大学の大学院生だ。

実習として、大学病院で患者の治療を行っている。そこでミチと出会った。

ミチが親不知の治療で大学病院に通った際の担当医をタケシが務めたのだ。

ミチは、懸命に仕事に取り組むタケシの姿が羨ましかった。輝いて見えた。

自分が生きてきた道のりで、どこかに落としてきてしまったキラキラを彼は持っていた。

自分もタケシと同じ年の頃はキラキラしていたのかもしれないと思うと、

胸が締め付けられるようなノスタルジーに襲われるのであった。

初めは羨ましいだけの存在だったが、タケシの誠実さに気付いてからは、会えば会うほど惹かれていった。

一方、タケシもミチに惹かれていた。人妻とは思えない程のあどけなさと、時折見せる大人の表情が、

天真爛漫な年上の女性に思えた。今まで出会ったことのないタイプで、

ミチのような女性はタケシにとってディープインパクトだったのだ。

二人が親密になるまで時間はかからなかった。これまで二人は何回もデートを重ねた。

体の関係はなく、喫茶店で会話を楽しむくらいの間柄だった。

会えば会うほど、お互いのことを知れば知るほど、二人は惹かれあっていった。

手も握ったこともない純粋な恋愛だった。

それが今日、タケシの強引な誘いに押し切られ、初めてホテルに入り、体の関係を持ってしまったのだ。

「もう終わりにしなければ」とミチは思った。

未来のある若いタケシが既婚の年上女性にのめり込まないうちに解放してあげなければ、

と考えていた。自分は既婚者、夫とは別れるつもりはない。

どんなにタケシを好きになっても結果的には遊びになる。

だったらサッパリ別れたほうがいい。本当はタケシが体を求めてくる前に別れるべきだった、

とミチは後悔していた。しかし、心のどこかで求められたい自分もいたことは否定できなかった。

 

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