本音を言えない私を、彼はギリギリまで焦らして甘く抱いていく (ページ 2)
「何かあった・・の?」
絞り出した言葉が、失敗だった。
私の言葉を聞いた瞬間、ハルトの眼光に苛立ちが更に滲んで、顔を歪めた。
あまり見た事がないハルトの様子に無意識に体が縮こまる。
ギシッと音を立てて、ベッドに片膝を付けて私に近づくハルトから思わず逃げるように後ずさった。
「え、なに・・?私に怒ってるの?・・それとも」
「身に覚えないの」
「え?・・ない、けど・・」
「今日誰といたの。」
「え、仕事だったけど・・。あ、課長!課長は、何でもないよ?ただご飯につきあわされただけで、そういうんじゃない!」
これ以上ないくらい、早口でまくしたてた私に、表情を変えず鋭い眼光のまま大きな掌が私の頭の上にかざされ、びくりと震えた。
ハルトが、わしゃわしゃとその手で私の頭を乱暴に撫でた。
「こんな事されて?呼び捨てで?」
殊更低くなった声音に、居酒屋の前で課長にされた事が重なった。あれを見られていたらしい。
「違う!・・って違くないけど、呼び捨てとかそういうの関係ない人なんだよ!昔からそういう人なの!」
「必死。また、それもムカつく。」
嘲るように笑うハルトに、背筋がひやりと冷たくなった。
ハルトの地雷を上手に踏んでしまいそうで、慌てて口を閉じた。
「ご、ごめんなさい」
「何、なんか悪いことしたの。」
「してないけど、不可抗力だけど。・・嫌な気持ちにさせたなら謝る。ごめんなさい。」
「・・聞き分け良すぎてムカつく。」
やり場の無い苛立ちに戸惑ってるような眼差しで私を見下ろすハルトに、思わず小さく溜息が出た。
だって、私はハルトよりもっと・・。
怒りを隠そうともしないハルトに、心の奥底に沈めていた気持ちが浮いてくる。
ハルトの目を見てると言いたくもない不満が飛び出してきそうで、目を逸らしてベッドから降りようと体をずらした。
「まだ、終わってない」
肩を掴まれて、再びベッドに沈められてハルトが私に覆い被さるように体重をかけた。
「私、ハルトから怒られるようなことしてない。」
「・・なんで、そうやって冷静でいられるわけ。」
「だって後ろ暗い事なんかないもん」
「なんか、突っかかる言い方。言いたい事あるなら言って」
吐息が掛かるほど顔を寄せられて、私の奥底を暴こうとするように見つめるハルトに、負けじとその目を見返した。
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