秘密のパーティで出会った謎の男性に、初めての快感を教わる私。指先だけでとろけそう (ページ 4)
「あ……、あ、あ……」
体中の力が一気に抜けていく。
立ち眩みを起こしたように、その場へぐずぐずとへたり込んでしまった。
「大丈夫?」
伶が手を差し伸べた。
「立てる? そろそろ中へ戻ろうか」
「え……」
彼の手にすがり、何とか立ち上がる。けれど、まだ足に力が入らない。まるで自分の体じゃないみたいだ。
「いいの? だって、その……あなたは、まだ……」
快楽を味わったのは自分だけで、彼はまだ、何も得ていない。
「平気」
仮面の下で、彼はふっとほほ笑んだ。
「ほら、ここにまだ、桜の匂いが残ってる」
美しい指先で、自分の口元をなぞって見せる。
「今夜は、きみの匂いに包まれて眠れる」
その妖しいささやきに、思わず言葉を失ってしまう。
「もうこんな時間だ、きみは帰ったほうがいい」
彼に言われるまま、盛り上がる宴を後にする。
――終わる。魔法の夜が、終わる。私の、一生に一度の冒険が、終わるんだ……。
いやだとは、言えなかった。
いつまでもあの狂乱の渦の中にいるわけにはいかない。日常に戻らなくては。
戻れる日常があるからこそ、冒険は楽しいのだから。
そしてそのまま、桜はおとなしく家へ戻った。
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