「俺とセックスしませんか」と微笑む彼の目の奥が冷たくて (ページ 2)
「ロングアイランド・アイスティです。」
「ありがと。」
「それ、見かけより強いので気をつけて。」
「うん。」
その方がいい。今日は酔ってしまわないと駄目だ。帰って何も考えずに爆睡したい。シラフでこの夜を超えるのは無理だ。一人になってしまえば、彼の断片を色々と探してしまいそうで。
喉を通ったアルコールが一気に全身に回り、ふわふわとした気分で煙草を消した。
「椿さん、俺とセックスしませんか。」
何か食べますか?と言う風なノリで言われたので、危うく受け流す所だった。
「・・え?」
「俺、今日一人でいたくないんです。」
にこにこと言う彼に瞬きを数回繰り返した。
「椿さんも、でしょ。」
初対面でしょ、とかあなたの事何にも知らないんですけど、とか言葉が忙しく頭の中を巡った。
けれど、
「いいよ。」
今夜一緒にいてくれるなら。
誰でも。
微笑を貼り付けて、智哉を見つめながら、その最低な言葉を飲み込んだ。
ホテルの部屋の扉を開けてから、智哉が私を中にエスコートするように招き入れる。部屋に踏み入れた瞬間、ガチャっと扉が締まる音がやけに響いた。
この切り取られた空間に、二人だけしか存在していない。
不思議とそんなことを思うのは、智哉の読めない表情が作り物みたいだからかもしれない。
首筋に冷たい指先が触れ、背中越しに熱い体温を感じた。
私の髪を長い指先に絡めて横に流してから首筋に湿った舌が這う。
「・・んっ」
痛いぐらいの圧をかけてから、舌先で撫でるように舐められゾクゾクとした快感が背中を通った。
智哉のサラサラとした髪の毛が首筋にあたって動くたびに、爽やかな香りの中に甘く濃密な香りが立ち上る。
「シャ、ワーを・・」
「決心を鈍らせたくないのでシャワーは後です。」
ぐっと手首を抑えられ、持っていたバッグがバサッと音を立てて落ちた。
「に、げないけど?コドモじゃないし」
「そうですね。じゃ、オトナな所を見せてもらいます。」
愉しそうな声色で耳元で囁いてから、ワンピースのファスナーを一気に下ろした。
するすると肌を滑りながら、呆気なくワンピースが下に落ちて冷えた外気が素肌に触れた。
アルコールも手伝って火照りだした肌に、智哉の冷たい指先が触れびくりと震えた。
「あのオーナーの昔からのセフレ、とは思えない反応ですね。」
それが良いのか、悪いのか判断がつかない抑揚のない声に少しだけムッとした。
「嫌なら帰るけど」
「逆です。興味が湧いてきました。」
そっちから誘ったのに、今まで興味なかったってこと?と抗議しようと振り返ると、含み笑いをしながら智哉の唇が私のに重なった。
冷たくて薄い唇で挑発するように唇を舌先でなぞられ、吸われた。遠慮なく入ってくる舌が冷たく感じるのは私の体温が上がっているからかな、なんて何となく考えてた。
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