私にはコンプレックスがある。けれどもあの人を前にすると胸は高鳴る一方で…
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私にはコンプレックスがある。けれどもあの人を前にすると胸は高鳴る一方で… (ページ 1)
才色兼備である玲の職業は社長秘書である。
今日も出勤時刻の1時間前には出社した。
澄ました顔でコーヒーを淹れ、自分のデスク周りを清掃し、パソコンを立ち上げ、メールチェックをする。
受信メールをそれとなく見ていた玲は、激しく動揺し、コーヒーを持つ手が震えた。
一級建築士である宮原から食事のお誘いメールが届いていた。
これで4回目である。
3回断ったのだからもう誘われることはないと思っていたのに、執拗さに驚いた。
宮原は建設業界のパーティーで社長から紹介された。
作り笑顔で名刺交換をしたが、胸中は穏やかではなかった。
宮原の長身と爽やかな笑顔のせいで、不覚にも胸が高鳴っていた。
食事には行きたいところであった。
食事だけで終わればよいが、その後誘われて深い関係になってしまったらと思うと、ためらってしまった。
玲には身体のコンプレックスがあり、どうしても見せたくなかった。
午後になり、宮原から直接秘書室へ電話があった。
玲宛てである。
メール見てくれたか、返事が欲しいと言われた。
結局は宮原の圧しに負けて、玲は食事に行くことをOKしてしまった。
* * * * * *
当日食事した会場は、高級ホテルのレストランであった。
和食が好きだと言ったら、宮原はそのホテルにある日本料理の個室を予約していた。
「いやあ、玲さん来てくれてよかったよ。また断られたら、どうしようかと思ってた。」
「…そうですか。」
屈託のない笑顔でお酒を勧めてくる宮原。
玲もその笑顔に癒されたのか、勧められるがまま飲んだ。
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