私なんて…頑なだった私を見つめてくれた後輩くんと深夜のオフィスで (ページ 2)
「ていうか、好きでもない人の残業、手伝いません」
「カイ君、優しいからボランティアみたいな感じだと思ってた」
「リコさんって、仕事はできても抜けてるとこありますよね」
苦笑いに似た微笑みを浮かべた彼が、私の頬を両手で包んだ。手のひらの温もりが頬に移る気がする。
「そんなに無防備だと、キスされちゃいますよ」
「誰に?」
「俺以外に誰がいるんですか」
「っ……!」
しっとりとした柔らかさが唇に触れた。角度を変え、何度も触れ合うだけのキスが降る。
「ちょっと、カイ君、待って」
「もう、無理です。止まれない」
「でも、ここ会社……んんっ……」
喋ろうと開いた唇に舌が差し込まれた。手のひらで抑えられているせいで、深いキスから逃げられない。
「だから、さっき帰ろうって言ったのに」
「やっ…こんなことになるなんて思わ、ない……」
甘い囁きが耳をくすぐり、意地悪な舌が耳たぶを舐めた。
ぞくぞくとした快感が体を駆け抜ける。
さらに彼は優しい手つきでシュシュを奪い、うなじから髪の中へと指を侵入させた。それに気を取られていたせいで、深いキスにまた捕まる。
椅子に座ったまま動けない私は、彼にとって容易く手に入るおもちゃと同じ。そう思うと急に悲しくなって、私は彼の胸を押しのけた。
「嫌ですか?」
髪を撫でる手を止めて、彼が問いかけてきた。切羽詰まったような顔さえ、どこか愛らしいのがずるいと思う。
「嫌なわけ、ないじゃん」
仕事ができて優しくて、顔だってちょっと童顔だけど並以上。そんな彼に惹かれないなんて無理に決まっている。だからこそ……
「からかってるなら、やめて欲しい」
「からかってなんかないです」
「じゃあ、罰ゲームとか賭けとか……」
「俺、そんなクズに見えます?」
ひどいと呟いて落ち込む彼は、もちろんクズには見えない。
「いや、でも、クズかも。俺、仕事中もずっと、リコさんを抱くことしか考えてませんし」
「嘘…んぅ、ぁ……」
再び始まったキスに、理性がどんどん小さくなっていく。
「好きなんです」
理性の最後のひと欠片は、熱っぽい言葉に溶かされた。
コメント (0)