午前三時。仕事帰りの彼がいつもと違っていて。溢れ出す涙を抑えきれない私に彼は… (ページ 2)
「なんで・・・」
震えるあたしの声に櫂がビックリして振り向く。
「え?な?佐知?な、泣いてる?」
「だって・・櫂・・なんで顔も見てくれないの?」
櫂の顔が歪んだ。
少しの沈黙の後櫂が絞り出すように話し出した。
「今日接待って言ったろ?女の子がいる店に行ったんだ。積極的な子がいてさ、結構密着したって言うか、さ、抱きつかれたりしてさ」
さっき感じた別の香りはこれか。
続けて、さらに辛そうに
「そこで部長が、「彼女と会うたびにヤッてちゃダメだぞ、マンネリになって嫌われるからな」って言ったんだ」
櫂はもう泣きそうな顔をしている。
「おれ、佐知が好きで、だから・・・会えばシたくなって、でもそれで嫌われたらって・・・でも佐知のこと見たら絶対シたくなるから」
胸がギューっとした。
そんなことかという安堵と同時にふわふわの茶髪の下で苦しそうに顔を歪めている櫂がいとおしくてたまらない。
「佐知も櫂こと大好きだから会ったらシたいもんっ」
「ホントに?いいの?イヤじゃない?」
櫂はモテるくせにこういう所がかわいい。
「イヤな訳ない。櫂大好き。」
そう言って櫂に抱きついた。
櫂は背中に腕を回してあたしの臭いを確かめるように深呼吸して
「俺も大好きだよ、佐知。」
誤解が解けた後のキスはいつもより激しく、貪るようにお互いの舌を求め合った。
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