土砂降りの中行き倒れている青年を助けたら…吸血鬼にお風呂場で食べられちゃう (ページ 3)
「何か食べる? もう少し待ってくれたら、何か作るわよ」
確か冷蔵庫はまだ充実していたし、ご飯も今朝炊いたのが残っているはずだ。
そう思いながらドアノブにかけた手が、ひやりとしたなにかに取られ、きゅっと喉が変な音を立てた。
思わず振り返ると、熱っぽい瞳がこちらを見つめていて、ドキリと心臓が高鳴る。
「必要ない」
「え、でも、お腹空いてるんでしょう?」
「我(われ)に食事は必要ない……お前さえ、いれば」
何のことか分からず、混乱する頭を必死に落ち着かせていると、腕を引かれて抱きすくめられる。
冷えていたはずの体は急に温度を上げ、顔が火照っていくのを感じながらも、弱弱しくも身をよじって腕から逃れようとするが、到底かなわない。
それどころか唇を耳に寄せられ、思わずひっと小さい悲鳴が零れた。
「我は、ヴァンパイア。生き血を啜り、月光の下生きる、夜の貴族」
まるで体の芯を溶かすような甘やかな声色で、そう囁かれる。
平静ならば何を言っているのかと笑い飛ばせるはずが、腰を抱き寄せられ、端正な顔で迫られて、頭の中は沸騰寸前だ。
「お前のような心優しいものに助けられて、嬉しい。助けついでに、我の空腹を満たしてくれぬか?」
まるで魔法にかかっていくように、だんだんと思考がぼやけてくる。
陶然とした瞳で自分を見上げてくる恵美に、吸血鬼だという青年は艶やかに笑んで見せながら、極上の音色で囁きかけた。
「お前の血が、欲しい……」
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