土砂降りの中行き倒れている青年を助けたら…吸血鬼にお風呂場で食べられちゃう (ページ 2)

雫が落ちないくらいまで体を拭い終えた恵美は、青年を覆う布をやや乱暴な手つきで引きはがした。

べしょっと音を立てそうなくらいに水を吸っているそれを玄関に置いたまま、足を引きずりながら青年を風呂場に連れていき、シャワーで湯をかけた。

立派なスーツが濡れてしまうが、ストーブなどこの季節に出ているはずもなく、体を温めるならこの方法が一番手っ取り早いのだ。

もうもうと湯気が上がるなか、だんだんと青年の頬に血の気が戻っていく。

よかった、と目を細めていると、ふいに体がぶるりと震え、恵美は小さくくしゃみをした。

「さむ……そういえば、私もびしょびしょだったわ」

後でしっかりとシャワーを浴びようと考えていると、青年の瞼が震えたのが見えて、慌ててコックを捻った。

「あ、目が覚めた? 大丈夫?」

出来る限り優しく声をかけると、ゆっくりと青年の瞼が開いていく。

覗いた瞳のルビーがあまりにも美しくて、どきりと胸が高鳴るのを感じながら、恵美はゆっくりとその体を抱え起こした。

「ここは……どこだ……」

「私の家よ。あなた、家の前で倒れてたの」

何があったのか覚えてる?と尋ねかけるが、青年は聞こえていないのかあちらこちらを見回している。

もう一度口を開こうとしたその時、くううう、と可愛らしい音が風呂場に響き渡った。

きょとんと目を丸くした恵美は、ゆっくりと自分の腹に視線を落とした青年に小さく吹き出す。

「あは、はははは!!!可愛いお腹の虫ね、あはははは!!」

「……仕方ないだろう。もうひと月ほど食事などしておらぬのだから」

気恥ずかしげに頬を染めながらそう早口で言い訳した青年は、かすかに口を尖らせながら視線を逸らした。

古めかしい口調だが、先ほどの音のせいで背伸びしているようにしか聞こえず、こみ上げてきた笑いを懸命に噛み殺しながらドアを開けた。

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