結婚記念日は一緒に過ごそう それはあなたとわたしの優しい約束

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結婚記念日は一緒に過ごそう それはあなたとわたしの優しい約束 (ページ 1)

かすかな気配を感じて、百合子はふと目を覚ました。

 背中から包み込まれるようなぬくもりを感じる。

 いつもの寝室、いつものベッド。こんなふうにぴったりと寄り添ってくるのは、夫の寿彦しかいない。

「どうしたの、あなた……」

 半分寝ぼけた声で問いかけると、ふふっと低く小さな笑い声が聞こえた。

「いや、だって。今日は結婚記念日だから」

「けっこん、きねんび……」

 百合子はぼんやりとつぶやいた。

 言葉の意味がよくわからない。まだ頭の中が半分眠っているみたいだ。

「約束したじゃないか。お互い、どんなに忙しくても、結婚記念日だけは一緒に過ごそうって」

「ああ……、そうね――」

 そう。確かにそれは、彼と結婚した当初からの約束だった。

 お互い、仕事などで忙しく、すれ違いになることも多いだろう。けれど一年に一度、ふたりの結婚記念日だけは、何があっても必ず一緒に過ごそう、と。

「うれしい。ありがとう、あなた……」

 夫の腕の中で、百合子はゆっくりと寝返りをうち、彼の温かい胸元に頬を寄せた。

 言葉にしない彼の優しさが、胸にじんわり沁みてくるようだ。

 本当のことを言えば、自分は今日が結婚記念日であることさえ、忘れていたのに。

 彼の唇が触れた。髪に、額に、まぶたに、頬に。

 ふたりの唇が重なる。触れて、すぐに離れ、また重なる。ついばむような軽いキス。

 夫の手が彼女の体をそうっと撫でた。肩から背中へ、ウエストへと滑り降り、着ているものを脱がせていく。

 大きく、温かい手。思いのほか、器用に動く。乳房を優しく包み、やわやわと揉みしだく。

 手の平のくぼみに胸の先端がちょうど収まると、彼はそのままそれを転がすように撫でた。

 乳首が熱を帯び、ぷつんと硬く立ち上がってくると、今度はそれを指先でつまんでもてあそぶ。かと思えば、また両手で乳房を包み込み、柔らかさを確かめ、楽しむように撫であげる。

「……んっ――」

 声にならない声がこぼれた。

 夫の仕草はいつも、とても優しい。

 この優しさが、自分に愛し合う歓びを教えてくれた。

 けして急がない愛撫は、ゆるやかに自分を高めてくれるけれど。

「ね、ねえ……」

 百合子は小さくかすれた声でささやいた。

「ん?」

 笑いを含んだ声で、夫が聞き返す。

 いつも、そうだった。

 夫はけして急がず、焦れたこちらがねだってくるのを待っている。

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