ジョギング中に出会った人と公園で

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ジョギング中に出会った人と公園で (ページ 1)

最初はダイエットのために始めたジョギング。

今ではストレス発散になっている。

仕事が終わってから、大きな運動公園を駆け抜けるのは気持ちがいい。

夜風が全身を撫でるように吹き、汗をかくことさえ快感だ。

それに、最近はちょっとした楽しみもある。

「こんばんは、千星ちゃん」

「あ、こんばんは、利人さん」

公園で顔見知りになった利人さんは、わたしより十歳くらい年上のナイスミドル。

わたしが一人で走っているのを見かけて、心配だと話しかけてくれた。

もちろん、最初はそういうナンパだと思って警戒した。

でも、何度か顔を合わせて言葉を交わすうちに、警戒は解けてしまった。

「今日はペースが速いね。嫌なことでもあった?」

「バレました?仕事で上司とモメちゃって…」

「それは大変だったね」

優しく接してくれる利人さんと合流すると、自然にペースがダウンする。

「むしゃくしゃすると、ダッシュしたくなります」

「分かる。俺もそういう時があるよ。歳だからやらないけど」

「利人さんは若いですよ。うちの上司なんてハゲでデブですもん」

「ハゲはこれからかもしれないし、デブだってジョギングをやめたらすぐだよ」

からからと笑う利人さんの目尻が優しい。

公園の外灯の下だから、ものすごく柔らかい表情に見える。

こういう顔を奥さんや子供に見せているんだろうなと、ふと思った。

利人さんくらいの年齢の人が独り身なはずがない。

思った瞬間、胸の奥がぎゅっと狭くなって苦しくなった。

「千星ちゃん?苦しい?」

急にペースダウンしたわたしを、利人さんが心配顔で覗き込む。

「少し…」

「ちょっと休もう。ゆっくり歩ける?」

「はい」

ベンチまで利人さんと歩いた。寄り添ってくれる体温が心地いい。

この体温をわたしのものにしたい。

急に獰猛な感情が内側で暴れ出す。

「利人さん、ちょっと肩を借りてもいいですか?」

「え?いいよ」

外灯の下のベンチに並んで、逞しい肩に頭を預けた。

利人さんの体が強張ったのを感じる。

「ごめんなさい…わたし、汗くさいですよね…」

慌てて体を離したら、利人さんの方がもっと慌てた顔をしていた。

「そんなことないよ。むしろ、好きな匂いっていうか…」

口ごもった利人さんが何かを振り払うように、首を横に揺らした。

「ごめん。気持ち悪いこと言ったね。むしろ、俺の方が汗くさいでしょ」

「ううん…利人さんの匂い、わたしは好きですよ」

無言で見詰め合った時間はどれくらいだっただろうか。

それから、キスをした。

最初は啄むようなキスだったのが、段々と求め合う深いキスに変わる。

「その…どうする?近くにラブホあるけど…」

荒い息で利人さんが尋ねた。

「移動するの無理。我慢できない」

わたしは喘ぐように答えた。

「じゃあ、あっちに行こう」

手を引かれるまま公園の奥へと歩く。茂みの裏にベンチがぽつんとあった。

まるで、わたし達を待っていたかのように。

外灯の光が届かない闇の中で、利人さんはわたしを強く抱き寄せた。

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