有名な浮名を持つ上司に騙し討ちを仕掛けて終わらせる片想い (ページ 3)

加賀さんの背中が食器棚に当たって音を立てる。

私はポットにぶつかり、湯気で眼鏡が曇った。

「外すな!」

拭こうとしたところを怒られて、慌ててかけ直す。

加賀さんは私をにらんでいた。

「金曜の…あの変装は、なんだ」

「変装っていうか…私、地顔が派手で…それでけっこう苦労したんで、普段はこうしてるんです」

「そういう意味じゃない、なんであんなことした」

決まってます。

どうせ実らない恋なので、一度でいいから、抱いてほしかったんです。

とは言えず、目を反らす。

舌打ち。

そして彼は、出ていった。

『あ、嫌っ、ああっ、ん』

『嫌? やめる?』

『やっ、ああぁ…!』

私を後ろから抱きしめて、抉るように突く。

片脚を持ち上げて、弱い場所を狙って、繰り返し。

『すごい、中ぎゅってなった』

『あ…』

『イっちゃった?』

私は声もなく、震えるばかり。

『まだやめてあげないけど』

『は、あ…っ!』

「真中…」

「あ…」

夜、廊下の片隅にある小さな休憩スペースで、ばったり会った。

もう社内に誰もいないかと思って、油断していた。

窓際で煙草を吸っていた加賀さんは、私を見るなり顔をしかめる。

私は溢れ返る記憶のせいで、まともに彼を見られない。

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