その手が、唇が、官能を掻き立てるから。理性をなくした路地裏での話 (ページ 2)

何分たっただろうか、詰めていた息を吐き出し、ふと視線をあげると、今度は自分をじっと見つめる、指の主の瞳が朱理を捕らえた。

(あ・・・)

慌てて、視線を逸らせた。

が、更にそのまま自分をじっと見つめている視線の気配を感じ、朱理はにわかに狼狽する。

すると、すっと彼が立ち上がる気配を感じた。

朱理が体をこわばらせる。

が、そのまま彼は朱理の横をゆっくり通り過ぎた。もしかすると、殊更ゆっくりと。

彼が通り過ぎ、朱理がふっと息を緩めた瞬間、はらり、と彼女の前に白いものが舞った。

(・・・?)

つまみあげてみるとそこには、

入り口を出て、左。 貴史

と、だけ、書いてあった。

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