好き過ぎる彼に抱かれて超絶幸せな彼女と、彼女をイかせて優越感に浸る彼のラブラブH (ページ 3)

その年の高校受験が終わったあと、紀穂が受験に失敗した男子生徒を、強い口調で励ましている姿を見た。自分だって泣きたいくせに。生徒の前では絶対そんなそぶりは見せない。紀穂はそういう子だった。

同じ頃、志望校に受かってはしゃいでいる生徒を、肩を落とした女子生徒のいる部屋から引っ張り出して、たしなめたことがあった。

「すんませーん」と反省しているのかどうだかわからないおめでたいヤローを見送ったあと、後ろから紀穂が現れて言った。

「勇人って、そういうとこちゃんと見てるよね」

「…紀穂だって見てるだろ」

「そうだけど。勇人に気にかけてもらえる子が、ちょっと羨ましいかな」

深く考えなかった。けど、今思えば、当時から俺に気があったのかな…。

その後、紀穂は付き合っていた男を振ったと、ウワサで知った。

しばらくして、俺も付き合っていた彼女に振られた。向こうから寄ってきたから一緒にいたけれど、すぐ妬く子で、最後は「勇人と付き合ったらもっと楽しいかと思ってた」と言い残して、離れて行った。

女めんどくせー。

それが当時の感想。周囲にはいちいち言わなかったし、当分恋愛とかこりごりだった。

そんなことより、面倒見てた中3っ子たちのことと、俺と同じように彼らに振り回されている紀穂のことが、いつも気がかりだった。

やっぱ俺は当時から、紀穂が好きだったんだな、と今は思う。いつもいつも、紀穂がどこで何をしているのか、気になって仕方なかったのだから。

*****

あの頃から、数年の時が流れた。お互いに就職して、職場にもようやく慣れてきたところだ。

そんな今日、久々に紀穂に呼び出された。喫茶店に現れた彼女は、えらく大人っぽくなっていて、ちょっと緊張した。

カウンターに並んで座って近況報告。一瞬訪れた沈黙の後、突然。

「勇人、あのね…」

「ん?」

「私、勇人のことが好きみたい」

「は?」

「塾講バイトしてた頃からなの。忘れようとしてたんだけど、なかなかうまくいかなくて」

寂しそうな横顔で、紀穂は一気にしゃべった。

「今日会って、最後にして、忘れようって思ったの。けど顔見たら、言っちゃった。やっぱ好き、めっちゃ好き。毎日勇人のこと、考えてたよ…会えなくてもずっと。ごめん…引くよね、久しぶりなのに、こんなこと言われて。はは」

返事に窮して黙っていると、紀穂が俺の手に手を重ねた。

コメント (0)

コメントを書く