温和な彼が実は経験豊富という噂を耳にして、焦りと嫉妬のキャンディキスを仕掛ける話 (ページ 4)
私の胸の高鳴りに合わせて、段々とカズヤの動きが早くなる。互いの体が繋がる音に、濁点が増してきた。
「サナエ…ッ…!」
ゴチュッ――と体の一番深くまで彼の重みを受け止めたと同時に、全身を支配するのはどうしようもなく甘い痺れ。
私を抱きしめるカズヤの腕に力が入っていて、彼もまた、私の奥で果てた余韻に体を震わせているのだと嬉しくなる。
――ぽつりと胸に残る罪悪感。彼を疑ってしまった自分が、どこか悲しくて申し訳なくなる。呼吸が整ってきたカズヤに、私は意を決して口を開いた。
「…ッ…カズヤ、私…」
ごめんね、と言いかけたそのとき、ぱちりとカズヤと目が合ってしまい、思わず口をつぐんだ。そんな私をお構い無しに、ゆるゆると愛おしそうに私を見つめて頭を撫でるカズヤ。
そうだ、とふと思い出したようにカズヤが言葉を漏らす。ゆっくりと向き合うと、私にニコリと微笑みかけてきた。
「誕生日おめでとう、サナエ。今度二人で飲みに行こうね」
うん、と力なく返事をすれば、カズヤは私の火照った頬を愛おしそうに撫で、そっとキスを落とす。微睡みの中、ふわりと彼が毛布を掛けてくれた感触だけが体に残った――
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「…よくも心臓に悪いウソで騙したわね」
「あら、お気に召さなかった? 最近私がハマってる漫画の設定なんだけど」
こんの、と拳で軽く小突けば、友人はニシシと悪い顔で笑ってみせた。うん、しばらくは文句を言わせてもらおう。
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