付き合っていた彼氏にフラれ、初めて一人旅をすることに。そこで出会った男性と…
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付き合っていた彼氏にフラれ、初めて一人旅をすることに。そこで出会った男性と… (ページ 1)
初めて一人旅をすることになったのは、長く付き合っていた彼氏にフラれたせいだった。
本当は二人で出かける予定だった観光地。
豊かな木々に囲まれ、空を映した大きな湖は、これ以上なく美しい。
案の定、そこには若いカップルたちがうじゃうじゃ溢れていて、私は言いようのない孤独感に襲われていた。
カップルに人気の場所なんだから、こうなることはわかっていたはずだ。
キャンセルするべきだったのに、一人で来てしまったのが間違っていた。
「綺麗な景色…」
本当は、彼と二人でこの景色を眺めるはずだったのだ。
そう思うと、自然と涙が零れそうになった。
その時、彼に声を掛けられた。
「あの、大丈夫ですか?調子が悪いなら日陰で休んだ方が…」
そう言いながら、彼は私にハンカチを差し出してくれた。
*****
「いや~びっくりしましたよ。一人でずーっとぼんやり突っ立ってて、しかも泣き始めるんだから。このまま湖の中に落ちちゃわないかなって、本気で心配でしたよ」
孝一さんは、そう言いながらビールを呷った。
彼にハンカチを差し出された途端、号泣してしまった私。
よっぽど情緒が不安定になっていたんだと思う。
その後、びっくり仰天した彼は、私を湖の近くのカフェに連れて行ってくれて、そこでゆっくり話を聞いてくれた。
優しくて聞き上手な彼にすっかり心を許した私は、彼と一緒に近くの街に寄って、居酒屋でお酒を酌み交わすまでに。
孝一さんは一人旅が趣味で、一人であることに何の孤独も感じないらしい。
「自分の好きなように行動できるのが楽しいんです。ツアーなんて全然自由時間ないし、時間に追われるし、あれの方が俺は苦痛ですね」
堂々としていて、自分というものを持っていて、そういうところがすごく格好良く見えた。
きっと彼は、たとえフラれたって、私みたいに情緒不安定になることはないのだろう。
楽しい時間はあっという間に過ぎて、そろそろホテルに帰らなきゃいけない時間になった。
正直、私は帰りたくなかった。
「じゃ、俺はここで。結子さんも旅を楽しんで!」
「待ってください!」
私は、孝一さんの手を掴んで、思わず彼を引き止めていた。
酔っていたのもあるかもしれない。
あんな大胆なことを言うなんて。
「まだ…一人で、いたくないんです。今夜だけは、孝一さんと一緒にいたいんです」
真っ赤になりながらそう訴えた私に、彼は優しく微笑んでくれた。
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