十年間何もなかった同期と、突然一夜を共にすることに。羞恥心で悶え苦しむ私。 (ページ 2)
「試す?俺たち」
この提案が冗談だともとれるよう、和弘は明るく奈央子にもう一度問いかけた。
「…そうね」
雨の夜のせいだ。奈央子は欲情している自分を抑えながら、和弘の提案を受け入れた。
十年間何もなかった二人が、突然結ばれることになったのだ。
和弘はそそくさと会計を済ませ、タクシーを呼ぶ。奈央子は冷静さを失い始め、窓の外をわけもなく静かに眺める。
こうして二人は、無言のままラブホテルへ向かった。
金曜日の夜に空室があっただけ、ラッキーだ。
部屋に入っても和弘は特に何も変わらない。まるで会社のデスクのように、ソファーに深く座ってテーブルの上の冊子をぺらぺらとめくっている。
落ち着かない奈央子も隣に座り、部屋をゆっくりと見渡した。
本当にこのまま二人は関係を持ってしまうのか、奈央子にはまだ確信はない。和弘の様子を見ていると、とても奈央子を誘った男とは信じがたい。
「和弘とホテルにいるなんて嘘みたい」
「そうだよな。いまさら感はある」
「シャワー浴びてすっきりしてきていい?」
「どうぞ、ゆっくりつかったらいいじゃん」
甘い会話ができない二人は、何とか自分の気持ちを冷静に保つ方法を考えていた。
奈央子は本当に先にシャワーを浴び、バスローブで出てきた。そして和弘も浴室へ向かう。
すっかり酔いもさめている奈央子は、ミネラルウォーターをグラスに注ぎ、一気に飲み干す。
ー緊張してる?
自分に問いかけてみる。何度も深呼吸をしながら、部屋の照明を暗くしたり、有線のチャンネルを変えてみたり、うろうろと一人で動き回っていた。
「あーさっぱり」
和弘が同じくバスローブで出てきた。
「落ち着けよ」
「落ち着けるわけないでしょ」
またソファーに深く腰掛けた和弘が、うろうろ歩く奈央子を見て悪戯に笑った。
「こっちに来て」
和弘が奈央子に目の前に立つように言った。
「なんか緊張する、やっぱり」
ドキドキしていることが、和弘に伝わることが嫌だった。抱かれたくて仕方がないなんて、負けを認めた気分になる。
「脱いだら」
「えっ?」
「それ脱いでよ」
キスもハグもせず、目の前で全裸をさらけ出す。その興奮は想像以上だった。和弘がこんなふうに女性を愛すことに驚きを覚えつつ、奈央子はゆっくりとバスローブを床に落とした。
「スタイルいいじゃん、肌も綺麗だし」
「…」
奈央子はじっとうつむいたままだ。薄暗い部屋に呆然と立っているだけで羞恥心でどうにかなりそうなのに、早く和弘に触れて欲しくて全身が疼き始めている。
一分ほどが過ぎた。ただ奈央子の体を凝視するだけで、和弘はなにも話さない。静寂が二人を昂らせる。
「ねえ、和弘も脱いでよ」
蚊の鳴くような声で、奈央子が訴える。
「なんで俺が?いいじゃん、奈央子を見て興奮してるんだから」
そう言って和弘は立ち上がり、恥ずかしさで頬を紅潮させている奈央子を見下ろす。そして、ゆっくりと奈央子の背後へ回った。
「お前、こんなエロい体してたんだ」
品定めされているような、まるで和弘と初対面のような、男と女の欲望だけが漂う空間は二人にとって十分な前戯になっていた。
奈央子はすでに濡れていた。乳首もツンと上を向いていて、体中から雌のフェロモンを放っている。
「いつまで続くの?」
和弘は何も言わず、自分のバスローブを脱いだ。その中心には驚くほど立派なモノが反り返っていた。そのまま和弘が奈央子を抱きしめ、唇を貪り始めた。
どうして今まで何もなかったのかと思うほど、キスの相性がいい。二人の生み出す卑猥な音がちゅぱちゅぱと部屋に響き渡る。
「ねぇ、早く…」
細身の和弘だが上半身にほどよい筋肉が付き、奈央子をすっぽりと包み込む。そのまま二人はベッドになだれ込むと何かが吹っ切れたように求め合った。
和弘の滑らかな舌使いに、奈央子の体が反応する。和弘の両手が胸を鷲掴むと、それだけで喘ぎ声が漏れる。
和弘の勃起もさらに硬さを増し、あちらこちらに当たりながら奈央子を刺激していた。
和弘の指使いは今までに体験したことのないような快感をもたらしていた。甘い痺れが規則的なリズムで奈央子に襲い掛かる。
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