他の男に調教されていた元妻を忘れられない俺に、SMサイト経由で貸出調教の依頼が… (ページ 2)
メッセージを開いてみる。
パートナーの女性を調教してほしいという、見慣れないハンドルネームを持った男からのメッセージだった。
このようなプレイを希望する場合、まずは掲示板で募集して、集まった中からふさわしい相手を選ぶという方法をとるのが普通ではないのか。
俺に、個人的にメッセージを送ってくる理由が見当たらない。
と思いながらも、すでに誰かと主従関係を結んでいる相手とのプレイは後腐れがなくていいと思い、詳細を教えてほしいという主旨の返信をした。
とにかく一度会って、気に入ったらそのままプレイに入ってもらって構わない、という短い返信が来たので、待ち合わせの詳細を決めた。
*****
指定されたバーのカウンターで、男を待っていた。
待ち合わせの時間よりかなり早く着いてしまったので、読みかけの文庫本を開く。
バーで本を読むのは、千夏の趣味だった。
なぜそんなに本ばかり読むのか、千夏に聞いたことがある。
千夏は何かを真剣に考えるときにするように、唇をぎゅっと結んで、
「薙ぎ倒されて、ひれ伏したいからかな」
と言って、耳を赤く染めて俯いた。
普段の千夏らしくない不穏な物言いだったけど、その時は深く考えなかった。
気に入ったらそのままプレイに入ってもらって構わないと言っていたということは、男と一緒に、その女も来るということか。
待ち合わせの時間が近づいてきたので、バーに入ってくる客に注意を払い始めた。
よく考えたら、目印となるものも用意しなかったし、男の特徴すら聞いていなかった。
女が、ドアをすり抜けるように店に入ってきた。
明るく染めたミディアムレングスの髪を無造作に束ね、短いチェックのスカートから覗く脚が肉感的な、小柄な女だ。
千夏に似ている。
「…!」
千夏本人だ。
声をかけるべきなのか。
千夏が俺に気づいて、カウンターに近づいてくる。
「亮平、久しぶり。ちっとも変わってない」
千夏が俺の隣に座る。
待ち合わせのことを一瞬忘れていたので、再びドアのほうに視線を向ける。
「…騙したわけじゃないんだけど、待ち合わせの相手は私なの」
では、貸し出される女とは、千夏ということか。
元妻を寝取らせるなんて、一体何の嫌がらせなのか。
「どういうことなんだよ」
「…見ての通り。この世界は広いようで狭いから。亮平には文章の書き方に特徴があって、あと、亮平の相手が時々SNSに画像を上げてた。手しか映ってなかったけど、手の形にも特徴があるからすぐにわかった」
千夏に行動を把握されていたのが気恥ずかしくもあり、でも見つけてくれたのを、嬉しく思ってしまう。
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