冷たい麦茶で始まる二人、エアコンでも冷め切らない熱く甘い夜 (ページ 2)
「暑いね」
「うん、暑いし熱い」
「ちょっと離れようか?」
「それは嫌、離さないで」
「ふふっ、りょうかーい」
暑い、も熱い、も認め合って、汗で湿った互いの体を撫で合っていく。きっとこれからもっと「あつく」なるだろうからと、直哉にリモコンを取ってもらって、風量を二段階強めにした。ピッ、ピッと二回音が鳴り終わるのと、直哉の指が中でぐいと曲がるのとが同時だった。
「ひゃあっ!」
喉が引きつったような声が転がり出てしまう。手から離れたリモコンがベッドから転がり落ちて、カシャンカシャンとやけに大きく鳴った。続けて何か小さなものが転がる音。どうやらリモコンの蓋が外れて、乾電池が転がり出てしまったらしい。後で探さなきゃ、と思いつつ、赤くなった顔のまま直哉に向き直った。
「ちょっと、急にしないでってば」
「ごめんごめん、でもそろそろいいでしょ? 玲美だって待ちきれないって顔してる」
「そりゃあ、そうだけど」
風量の増したエアコンのごうごうという音に負けないくらい、私と直哉の息は既に荒い。入れる前に一度気持ちよくさせてくれるのが常で、今日も直哉はきっとそのつもりで下をじっくり触ってくれているのだと思うけれど、正直、もう痛みなんて感じないくらいに濡れてしまっているから、早く入れてほしいなあ、とも感じてしまう。それでも、一回気持ちよくなってからの方が私も直哉も互いにもっと気持ちよくなれることを分かっているから、暑さと熱さともどかしさに耐えながら、直哉のリードに身を任せておく。
「そろそろかなあ?」
「あっ、やだ嘘、なんで分かるの。なんで、ああっ!!」
「へへっ、玲美のことだもん、分かるよ。気持ちよくなるときの顔も、声が切羽詰まる調子になるのも、気持ちよくなろうとする時に右手に力が入ることも、全部知ってる」
チカチカする重たい頭に直哉の声が降る。彼は言葉通り、私のことを何でも分かってる。お風呂上がりの麦茶が好きなことから、達する時のサインまで、本当に何でも分かってる。ああ、私もそれくらい、直哉のことをもっと分かってあげられたらいいのに。年上のこの人に、私はまだ分かられてばかりだ。幸せにしてもらってばかりだ。
火照った傍からエアコンの冷風が当たり、汗を冷やす。間を置かずすぐに汗が滲んで熱くなる。室温は確実に下がっているはずだけれど、私達は一向に冷える気配がない。きっと最後まで二人とも熱いままだ。寝室へ移動する前に飲んだ冷たい麦茶だって、きっと煮えたぎるような温度になってしまっているに違いない。幸せ、の気持ちに茹でられて、私の体はもうふにゃふにゃだった。
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