終電を逃した職場の後輩を家に泊めたら、優しい雰囲気から一変して『男』を意識させられる話
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終電を逃した職場の後輩を家に泊めたら、優しい雰囲気から一変して『男』を意識させられる話 (ページ 1)
「ごめんねー、こんな時間まで手伝わせちゃって」
もう間もなく日付を跨(また)ぎそうな時間帯。
いくらオフィス街といえど、この時間はさすがに人もまばらだ。
こんな時間まで後輩を付き合わせてしまうなんて、完全に失態…。
私は疲労の色の濃い目を隣に向け、謝罪した。
「いえ。あんな量の仕事、明日の朝一で提出なんて…理不尽すぎますから」
「木村くんに手伝ってもらわなかったら、まだ終わってなかったよ。本当にありがと、助かった」
終業時間後、ドサリと音を立てながら課長から渡された書類の山を見て絶望していたところ、いま隣を歩く背の高い後輩こと木村くんが手助けしてくれたのだ。
あのまま一人で作業していたら、夜が明けていただろう。
…本当に助かった。
「あ、木村くん。終電ある? 帰れる?」
「俺のことは気にしないでください。男なんで、どうとでもなります。俺のことより清水先輩は?」
「私は歩いて帰れる距離だから大丈夫なんだけど…。ねえ、もしよかったらうちに泊まる? 終電過ぎちゃったんでしょ?」
そう言うと、木村くんは目に見えてたじろいだ。
「いや、それはさすがに。漫喫とか、いくらでも時間潰せるんで」
「そんなところじゃ休めないよ。明日も仕事だし…嫌じゃなければうちに来て?」
少し強引かな…とも思ったが、手伝ってもらった手前、後輩を寒空の下に放りだせるわけもなく。
私は半ば引きずるようにして木村くんとともに家路に就いたのだった。
*****
マンションに到着し、自分より悠に20㎝は高いであろう大きな体をエレベーターに押し込む。
木村くんは道中ずっと何かを言おうとしては口をつぐみ、何かと葛藤しているような素振りを見せていた。
私はハッと思い至り、「もしかして彼女いる? そういう意味で泊まるのまずいとか?」と問いかけると、盛大なため息とともに「彼女はいません」と返ってきた。
マンションに踏み入れたことでようやく観念したのか、大人しくなった木村くんを家に招き入れる。
予想外の来客なので少し部屋が散らかっているが、いたしかたない。
そこは目をつぶってもらおう。
そんなことを考えつつ、リビングに案内するため靴を脱いで隣を通り過ぎようとすると、すれ違いざまに突然腕を掴まれた。
「俺、一応男なんですけど。いいんですか、こんな夜中に家に入れちゃって」
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