ただの同僚、そう思っていたはずなのに… (ページ 2)

10分も経たぬ内に絢也が来た。

いつものスーツ姿とは違ってラフな服装の絢也は別人のようだった。

少し戸惑いながら

「なんでこんな早いの?」

と尋ねると、テーブルをはさんで座りながら

「近くで飲んでたんだよ。んで?アイツまた人のせいにしたんだろ?」

と返ってきた。

アイツとは上司のこと。促されるまま話し始めた。

飲んでいるせいもあって涙が止まらない。

「わかるよ、梨子。」

そう言って腕を伸ばしてわたしの頭をそっと撫でた。

胸元が開いてネックスレスが見えた。

時々ワイシャツの下からネックレスが見えていたことを思い出した。

思いがけずやさしく頭を撫でられて涙も止まっていた。

「もうちょっと飲もうぜ」

そう言ってグラスを差し出した絢也の人差し指にシルバーのリングが光っていた。

「絢也ってリングとかするんだね」

さっきまで泣いていたせいでよく見ていなかった顔を初めてちゃんと見た。

「今日は休みだからな」

ピアスもしている。

髪型も違う。

急に別人といるようで恥ずかしくなった。

お互いの仕事の愚痴や悩みを話しているうちにすっかり酔いが回った。

泣いたせいもあって瞼が重い。

「眠いの?」

そう言って覗きこんできた絢也にドキッとした。

茶髪のふわふわヘアー。

色白で鼻筋が通っている。

ちょっと厚い下唇。

こんなに近くで顔を見るのは初めてかも知れない。

私のことを案じるような表情をしていた絢也だったが、不意に、真剣さを帯びた眼差しへと変わった。

「梨子、今晩俺にくれない?」

カウンターの上のわたしの手にそっと握って言った。

恥ずかしくて頷くことしかできなかった。

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