恋に仕事に大撃沈の私。「引きずってんじゃねぇよ」って慰めてくれた先輩は強引に……。 (ページ 2)
「……何泣いてんだ」
「……え?」
ぱた、と。
自分の手の甲に熱い雫が落ちる。
「あは……なんでだろ……」
自分でもわからなくて、でも、涙は次々に溢れる。
「……お前、フられたんだってな」
無遠慮な先輩の言葉が、私の心を抉る。
「……そ、うですけど……」
「で、それは元カレを思っての涙なのか。案外女々しいというか、割り切れない性格しているんだな」
「……ッそんなの、菅原先輩に関係ないじゃないですかっ!」
目の前にいる菅原先輩は――くやしいけれど、女の人に困る事はないであろうルックスで。事実私の同期からも人気だ。
「菅原先輩みたいなモテる人には、私の気持ちなんてわかるわけないです!」
言ったところでどうしようもないけれど。
私はそれを堪えることはできなかった。
「知らねぇよ。浮気されていた癖にそんな男に未練たらたらな女の気持ちなんて」
「……ッ!」
だったら。
もう私のことなんてほっといてください。
その言葉を口にすることができなかったのは。
菅原先輩が、私の事を強く、その胸板に押し付けるように抱きしめたから。
「せ……先輩……?」
ふわっと香る男の人の匂いと、柔軟剤の香り。
後頭部をがっしり掴まれているから、顔を見上げる事もできない。
菅原先輩はそれからしばらくしてから口を開いた。
「伊織、お前、なんかいい匂いするな」
「え、はい? ……ちょっ! 突然何……!」
先輩にすんすんと髪や耳の後ろの匂いをかがれ、驚きとくすぐったさに抵抗したがびくともしない。
「お、泣き止んだな」
「な、涙引っ込みますよそりゃ……」
「そらよかった。いつまでもくだらねぇ男のことなんか引きずってんじゃねぇよ」
――はむっ……。
「ひゃん!」
言うなり菅原先輩は私の耳をはむっと唇で甘噛みした。
かりっと歯を立てられれば、痛いのに、ぞくぞくと背筋をへんな快楽が走る。
「あ……! 先輩、急に……!」
なんなんですか、と抗議しても菅原先輩は耳への愛撫をやめない。それどころか、耳を舌でなぞり、ゆっくりと首筋を唇でなぞる。
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