別れた彼と人波でごった返す花火大会でまさかの再会… (ページ 3)
「お願い、ちょうだい……?」
「なにを?」
わかってるくせに卓也はすました顔で知らんフリをする。潮騒と花火が弾けた。喧騒と屋台のにおい。意識の端にそれらを置き去りにして、私はもう卓也しか見えない。
「ねえ、挿れて……」
卓也はまだ動かない。
みじめなのに鼓動が早打つ。私は卓也に背を向けて松の木に片手をかけると、自分で浴衣の裾を腰上にまくった。腰を上げて片手で尻たぶを広げると、ぐっちりと濡れているのが音からも感触からも感じられた。
「卓也のが欲しいよ……」
生唾を飲むのが聞こえた。チャックを下ろすと苦しそうに跳ね出てきた陰茎からはカウパーが滴っていた。
腰をつかまれて陰部同士をこすりつけられる。どちらのものかわからない雫が、卑猥にぬかるんだ音を立てる。
「別れないよ」
荒い息を吐きながら、卓也ははっきりと言った。
「誰が茜に関心がないだって? 気づいてよ。俺がどんな気持ちで茜の傍にいたか、どれだけ毎日抱きしめたいと思ってるか、別れようなんて言われたとき言葉も出ないくらいショックだったよ。茜は一つもわかってない」
「卓也……」
「茜に他に好きな奴ができたって関係ない。そいつにそんなかわいい浴衣姿もう見せさせない。絶対誰にも譲らない」
「ああっ!」
一気に奥まで打ち込まれた。すぐ引き抜かれて今度はもっと奥まで突き抜かれ、ゆりかごのつぼみにぶつかるほどだった。律動は一回ごとに激しさを増して、出し入れされるたびに卓也の陰嚢が女芯を叩く。
もうさほど隠せていないはずの嬌声と、ずぽっ、ずぽっと下品な抽出音は花火のフィナーレを飾る連射と開花の両方でかき消され、私も卓也も獣のように互いの体をむさぼった。
「あっあっあっもうだめっ! イっちゃう!」
「俺も……!」
手が伸びてきてあごをつかまれて、私は顔を後ろへ向けさせられた。卓也の顔がすぐそこにあって、どちらからともなく舌を伸ばせばどちらのものかわからない熱い息が顔中にぶつかった。後ろから卓也に抱え込まれて、早くて深い出し入れとともに深くて長いキスをされて、呼吸もできずわけもわからなくなったまま果てた。私の道がびくっびくっと卓也を締め付ける。イってしまった花弁から陰茎を抜き取るとそのまま卓也も果てたのが、太股が欲望に濡れたことでわかった。
「茜……」
「……うん」
「好きだよ」
私はわざと答えない。見上げた夜空は沢山の花火が果てて煙りに汚れていた。最後の花火が軌跡を上げる。
「茜、本当に好きだよ」
焦ったように卓也が言った。けど、ちょうど最後の特大花火が咲いたとこだったし遅れた轟音が耳に入ってしまったので、聞こえていたけど聞こえてないフリをした。
「花火が、きれいだね」
もう少し、私のためにおろおろしていてもらおうかな。
卓也の大きな手のひらをすくい、散り行く花火を見送りながら呟いた。
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