夢の中で出会う私だけの恋人。今夜もまた、あの人に抱かれるために私は夢を見る (ページ 2)

「ああっ!も、もう……いや、もう、だめ……っ」

彼の熱いものが荒々しく私の中を出入りする。

体のもっとも奥深いところを強く突き上げられ、私はふたたび絶頂へ押し上げられる。

「ああ、もう……もう、だめ、だめえ……っ。もう、お願い、許して……」

あまりの快感に泣きじゃくる私を、彼は優しく抱きしめてくれる。

「可愛いよ。愛してる」

「わ、私も……。私も……」

そして彼は、私が快楽の中で意識を失うまで、激しく、巧みに、私を責め続けてくれるのだ――。

目が覚めた時、私の全身はいつもうっすらと汗ばみ、まるで本当にさっきまで狂おしく愛し合っていたかのようだ。

両脚の間がじんじんと快楽の名残に疼いている。

そんなはずはないのに。

あれはただの夢。

古びた懐かしい雰囲気のお店も、そしてあの彼も、何一つ実在してはいない。

なのに、私の体にはまだ、彼の感触が残っているような気がしてならないのだ。

彼は、夢の中でしか出会えない人。

けれど私の恋人。

理想の恋人だ。

現実の生活の中で、彼よりも強く私を魅了してくれる男性には、まだ出会ったことはない。

もしかしたら、そんな男性には一生出会えないのではないだろうか。

これから先、私は現実の男性に恋をすることもできないかもしれない。

それでもいい。

だって私は、今のままで幸せなのだから。

そう思っていた矢先。

街で、彼の姿を見かけた。

「え……」

人ごみの中、偶然すれ違った人。

でも、間違いない。

彼だ。

夢の中で、何度も何度もキスをして、愛し合ってきた人だもの。

絶対に間違えない。

「あ、あの……っ!」

私は思わず声をあげた。

けれどその先の言葉が出てこない。

彼を、何と呼べばいいのだろう?

夢の中の名前は、現実でも彼の名前なのだろうか?

そもそも、本当に彼は、夢の中の彼なの?

私のただの思い込みではないの?

けれどその時。

彼が立ち止まり、振り向いた。

私に向かって、優しく微笑む。

そして彼は、自分の唇に軽く人差し指をあてた。

何も言わないで、という仕草。

「あ……」

言葉を失い、立ち尽くした私に、彼は一言だけ、こう言った。

「また、夢でね」

「え……」

私が問い返す間もなく、彼の姿は雑踏の中へ消えていった。

また、夢で。

やっぱりそうだ。

彼は、私の恋人。

夢の中でのみ会える、私の最愛の人。

もう一度彼に会いたいのなら、夜、眠りにつけばいいだけ。

私は足早に歩き出した。

早く帰ろう。

そしてベッドに入り、目を閉じるのだ。

そうすればまた、彼に会える。

誰よりも愛しい、私だけの恋人に。

-FIN-

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