絵画教室の先生の言葉責めと絵筆の悪戯に、私の体が言うことを聞かなくなってしまう

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絵画教室の先生の言葉責めと絵筆の悪戯に、私の体が言うことを聞かなくなってしまう (ページ 1)

彼もいない、趣味も特にない千尋の週末は、ただ家でごろごろすることが日常になっていた。

 三十歳を目前にし、さすがに生活を見直そうと思い、地元のカルチャーセンターのチラシに目を留める。

 体を動かすことは苦手だし、音楽も苦手、料理も好きではないと消去法で見ていると、絵画教室が候補に残った。

 絵を描くことは下手だけれど、見ることは好きな千尋。何となく続けられそうな気もして、早速体験レッスンの予約を入れた。

「初めまして、講師の太田です」

「初めまして、よろしくお願いします」

「どうぞ、どこでも好きな場所に座ってください」

「はい」

 中央のテーブルに置かれた果物を三人の生徒が描いている。軽く会釈をされて千尋は奥の椅子に座った。

 一番年配の男性は絵を描くことに慣れているようだ。もう一人の年配の女性は、気品があって淡いベージュのカットソーがよく似合っている。絵が趣味だというフレーズがぴったりだと思う。

 もう一人は四十代後半に見える女性だ。明るく元気なお母さんという感じで、太田先生にも色々と質問をしている。

 何より、太田先生は千尋が思い描いていた「絵画教室の先生」のイメージにぴったり当てはまった。

 四十代前半ぐらいで、柔らかい雰囲気。細身でふわっとしたパーマの黒髪、丸眼鏡が似合う卵型の顔、そして小さな鼻と薄い唇。大きな声を出すわけでもなく、生徒に優しく話しかけている。

 千尋は簡単なアンケートを記入し、太田先生に手渡した。

「皆さん、好きなように描いてもらっていますので、楽しんで絵を描いてくださいね」

「とても下手ですけれど」

「大丈夫ですよ。皆さん、そうおっしゃいます。描いてみましょうか」

「はい」

 スケッチブックと鉛筆を渡され、千尋は自分の思うように描き始めた。何かに没頭することが久しぶりで、楽しい。

「お上手ですよ」

「凄いですね、初めてとは思えませんよ!」

 その場にいる全員から褒められ、素直に嬉しかったこともあり、千尋はその場で即決して帰宅した。

 こうして、千尋の習い事が絵画に決まり、週に一度太田先生と会うことになったのだ。

*****

 千尋が通い出して半年が過ぎた。他の三人は誰かが欠席だったりするが、千尋は皆勤だ。まさか自分でもここまでハマるとは思ってもいなかった。

 三人の生徒は年上だが、みんないい人で少しずつお喋りも楽しんでいる。

 ある日、上品なマダムが千尋に聞いてきた。

「千尋さん、美術館にはよく行かれるの?」

「いえ、十年ほど前に友人に誘われてついていったぐらいです」

「そうなのね、これよかったらどなたか誘って行ってみない?」

 マダムが、日本でも人気の画家の美術展のチケットを、二枚千尋に見せる。

「行きたかったんだけれど、主人の用事に付き合わなきゃいけないのよ。日もないから、せっかくだしどうぞ」

「いいんですか!嬉しいです。誰を誘おうかな…」

「誰も誘う人がいなかったら、僕が行きますよ」

 その声は太田先生だった。

「あら!先生となら説明もしてもらえるしいいわね」

 マダムが嬉しそうに笑みを浮かべる。千尋も嬉しかった。この半年、太田先生の人柄はもちろん、なぜか惹きつけられる大人の男の色気にすっかり魅了されていたのだ。

 二人で美術館に行くことも大人のデートという感じがして、千尋はスケジュールに「美術館デート」と書き込んだ。

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